シズヲ

星のない男のシズヲのレビュー・感想・評価

星のない男(1955年製作の映画)
3.9
冒頭からフランキー・レインの主題歌が印象的な西部劇。主人公の陽気なキャラクター性がやっぱり魅力的で、カーク・ダグラスの普段のイメージとは異なる愛嬌たっぷりの振る舞いが楽しい。弾き語りで熱唱までしてくれるし、ガンプレイもきっちり決めてくれる。相棒的ポジションの通称「テキサスっ子」との関係性もなんだか兄貴分と弟分みたいで微笑ましいし、ユーモラスな雰囲気がちらほら見受けられるのが面白い。乗馬や牛追いなどカウボーイらしい描写も良くて、終盤のスタンピードとの対決シーンなんかは物量も相俟ってなかなかの迫力。

剽軽なカーク・ダグラスが実は影を背負っているという設定もギャップがあって良いけど、それが「カウボーイの華々しい時代の終焉」と直結する事柄なのが印象的。東部資本の介入(女性オーナーという意外性が時代の変化を象徴してるようで面白い)や有刺鉄線の導入など、主人公を追い立ててきたものはまさしく西部開拓時代の過渡期における流れそのものなんだよな。そんな彼が逃げ続けてきた過去の傷を乗り越えるべく負の連鎖を断ち切りに行く展開にはグッと来る。

ラストはけっこうな駆け足で終わるし、リチャード・ブーンが明確な悪役になったことで構図が単純化されてしまった感はある。それによって(横暴な手段は食い止められたとはいえ)牧場同士の対立の落とし所は結局濁されたまま終わったという印象が否めない。全体的にやや小粒感はあるけど、カーク・ダグラスのキャラクターやカウボーイの生活感などの魅力のおかげで十分楽しめる。あとDVDの画質めちゃくちゃ良くてたまげた。
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