強くもなく、イイ男でもなく、何のとりえもない男が、ひょうんなことから好きなタイプの女に出くわしたから大変。女が避けても、避けても付いてくる。はっきり言ってストーカー。でも、そのうちに情が移るから不思議だ。監督のJ.カサヴェテスはそんな情景を温かく、ユーモアたっぷりに描いた。
男の母親が女に向かって「こんな男と結婚してどこがいいの?」と自分の息子をボロクソに貶(けな)す。すると女の母親が男に「どうやって生活してくの?」と聞くと「大きな駐車場のパーカー(車を出し入れする仕事)になる。今よりもっと大きな駐車場の。」女は男を擁護する。「彼、パーカーが好きなの。」その時の二人の母親たちの表情は「だめだ、コリャ」と。その感じが何とも可笑しくて、何回も見直した。
人間、本当に惚れると、ここまでやる、’一目惚れ、男の一念、岩をも通す’ の見本みたいな映画かな。
例によってG. ローレンスはイカした女を演じるが、本当にハイヒールの似合う女優だなあとつくづく思った。