ニューランド

サザエさんのニューランドのレビュー・感想・評価

サザエさん(1956年製作の映画)
3.2
☑️『サザエさん』及び『続 サザエさん』▶️▶️
知らなかったが、最近『サザエさん』の実写版、それもTVアニメから二十年後の話が、あったらしい、面白かったと知人から聞いた。サザエさんは天海祐希との事。だけど、我々の世代の感覚だと、水戸黄門は東野でなく月形龍之介、サザエさんはアニメでもなく、江利チエミとなる。TV版しか観てないが、以前映画シリーズ全9本がTV放映された際、いいなと部分的に観ていた。そして今回最初の三本がスクリーンで。一作目は、生の軽演劇を観てるような親密感と近しい臨場感があるが、まだ顔見せの小手調べ程度。TVで好きではないと云いつつ時たま観てるので、波平が松太郎他、タイ子さんらも役名が海と無関係なのもあって引っ掛かかりもしたが、原作やアニメよりも、これしかあり得ない江利のサザエさんの他、配役が唸らせる。礒野家は、釜足=清川の父母の下(波平そのものの金語楼は引退の上司役)、江利・松島他の3人きょうだい、従兄のノリ助夫妻が仲代=青山、恋人マス男は小泉、御用聞きたちがD・ダックス他。民主主義反映の威張った者のいない平等発言権の家族(会議)。
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そして、理想の映画、真の映画の傑作として結実したのが、続編『続 サザエさん』。大体前作を引き継いでて、務め先の探偵事務所所長から、舟さんのお兄さんに、森川の役どころのみが変わり、サザエさんの級友やその夫らに若山・佐原ら、ノリ助の弟で藤木、イササカ先生夫妻で三木=藤間等が増えてる。D・ダックスのご用聞きは脱線トリオに変わってて、その意地の悪い寸評通りに、サザエさんも、「跳ねっかえりのお転婆」で半ば寅さん的ちょっと困り者に進化?している。しかし、本作の素晴らしいのは、そういった行為の失敗・混乱・侮辱の顛末が、そのまま何の咎めもなく日常・コミュニティの一部として受け入れられ、スッと編み込まれて通り過ぎていって(本人自戒以外は)何の影も落としていかない所だ。世相は逆コースが進んでいたころだが、下の層では旧来の隣組感覚と戦後民主主義が溶け合ったのが維持もされてて、変な締め付けのない緩やかな頃の味わい・懐しさ、妙な懐のスケールがはっきり手にできる、今でも普通に昨今の現実を突き破る力・秘めた鋭さで作品は生き抜いてく。
なんにつけ平均的なタッチの前作に比べ、そのベースに載った、時折・気づかない勘所での思わぬ、カメラ位置の高さ・角度の本質を垣間見せる切り替え・組み立て、俳優の動きとカッティングの不測の瞬間スピードアップ、独自の味わいのカメラ移動や駒落としの速め動きの使用、がなされ何かが極り・かつ・気付かれない程の鋭さで本質を奥まで突いている。映画そのもの、コミュニティそのものを、気負いなく伝えてくる。贔屓の監督なのだが、声高に云う気はないが、1人満喫には留めたくはない。私には名作家だ。
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