水無月右京

ゴッドファーザーの水無月右京のレビュー・感想・評価

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)
4.0
ゴッドファーザーは3部作です。これら全体を通じての感想を一言でいうと、"自身と組織の生き方・守り方"についての作品。本作は、麻薬ビジネスに関する価値観の相違からコルレオーネファミリーと5大マフィアとの抗争、初代から2代目への世代交代までが描かれています。

色んな方々のレビューを拝見すると、初代が魅力的・・・というのが多いです。自身やファミリーへの忠誠を誓っている限り親身に接する義理堅さ、身の回りの人々を守ることを自身の生き様としてきたこともあってか、人をダメにする麻薬を扱ってはならないとする姿勢、経験に裏打ちされた大局観と表立った敵をつくらないしたたかさを持ち合わせているからでしょう。俺は、初代も2代目も魅力的だと思います。初代と2代目では、背負っているもの、双方が形成されてきた背景、運営する組織規模が異なるからなんですね。

初代は、身一つでシチリアはコルレオーネ島から難を逃れて渡米しました。(詳細は、"ゴッドファーザーⅡ"で明らかに)移民として肩身の狭い想いをする中で、"家族"の暮らしを守るため様々なことに手を染め(あまり誉めることのできない内容ですが)、その過程で人脈を構築、マフィア組織を作り上げたいうなれば創業者です。ファミリーの特徴は、イタリア・シチリア系人材で固めたこと、自身の家族もメンバーに加わっているため、強靭な結束が特徴です。個人から小集団に、小集団から組織へと成長させていく過程で、人を観察してきた、相談もしたことは想像に難くありません。腹心の部下や懐刀と呼べる重厚な幹部層を形成できた。自身の手が届く、目も行き届く、言ってみればベンチャー企業の立ち上げから中堅企業まで育て上げたカリスマ社長のようなものです。

一方2代目はというと、初代暗殺を目論んだ他ファミリーに対してリベンジするところからマフィア人生を歩み始めます。父親同様、"家族"と"ファミリー"を守るとともに、ファミリーの更なる成長を図りました。中堅企業を上場企業まで育て上げたしっかり者で、度胸があり知恵も回る。ただ、十分な経験をつんでいない段階で2代目になってしまったせいか、敵を作りすぎてしまい、度重なる抗争で初代を支えてきた重鎮・幹部を失ってしまったこと、彼らにとってかわる骨太な人材が育たなかったこと(組織の拡大とともに全体を見渡すことのできる人が減ってしまうのは世の常ではありますが)は不運でした。3作目で「敵を憎んじゃいかんのだ。判断を誤るからだ。」と彼は後の3代目となるヴィンセントに言うのですが、敵を増やさない賢さを持ち合わせた彼は、初代の境地に近いところまで達したものと俺は評価しています。

本作のストーリーから大幅に脱線したわけですが、この作品を見て感じられることは、単なるマフィアの抗争映画ではないということですね。家族とは何か、組織とは何か、抗争するとどのような代償があるのか、家族や組織を守るということはどういうことなのか、たとえ敵が憎くとも大局観に立って許すことで全体最適を優先すべきことがあるということ(抗争回避は知恵である)、それでもなおやるべきと判断できれば徹底的に潰すこと、などなど、見方次第で様々なメッセージを感じ取ることが可能で、極論的には自身と組織の生き方・守り方の映画と言う事ができるかと思います。

初見の方は、本作の登場人物があまりにも多いため、グーグル先生に伺いを立て、"人間関係図"をチェック、wikipediaなどで登場人物の設定や立ち位置をチラ見しつつDVD鑑賞するのが良いでしょう。他には、1だけ見ても全体像がつかめないので、1と2を何度か見たうえで3を見る…が正解だと思います。

このシリーズ、どれも3時間コースとなっていることと、世界観にハマれる人は実はそれほど多くないのではないかと思われる(人が多すぎて話についていくのが難しい)ことを勘案して、4.0評価とさせていただきましたが、名作の呼び声が高いのも十分うなずける作品です。見る映画ねぇなーとかなったときにでも思い出して、ご覧になるとよろしいかと思います。3部作どれも楽しめましたよ♪