ケムール人

ゴッドファーザーのケムール人のレビュー・感想・評価

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)
4.8
映画ファンなら一度はそのタイトルを耳にしたであろう名作中の名作。

3時間という長さで、比較的スローペースだが、そのどのシークエンスも必要であり、スパイスとして機能している。特に冒頭の結婚式は、映像で登場人物や組織の映画内での現状、心情を描いている。言わば説明シーンとしての役割を果たしているのだが、リアルな日常がそこでは描かれていてご都合主義的な説明になっておらず、説得力がある。傍若無人で話にならないソニーの人間味にも気づくことができ、愛着を持てる(写真はマイケルが来てからだ、と父に言われた直後のソニーの呆れっぷり)。また、ここでマイケルの当初の心情がきちんと描かれることでラストの「ドン・コルレオーネの継承」のパンチがより効いたものになる。そしてそのラストの見せ方もまた秀逸。ケイとマイケルの心理的隔絶を仕切りとしてのドアと二人同時にピントを合わせないで捉えるカメラワークで表現している。その直後のラスト一コマでのケイの何かの異変に少しだけ気づいたような(気づいていないような)表情。この一コマがしっかりと余韻を残す作用をしている。技巧的かつ丁寧で、映画史に残る名シーンの連続だと感じるし、映画を見ている自分もエモーショナルな盛り上がりを身をもって感じることができた。リアルなマフィアを追求したのはマーティン・スコセッシ監督の傑作『グッドフェローズ』だが、本作は映画の技巧を結集して徹底的にエモーショナルさで攻めている。

ただ、演出上の視覚情報が多い上に、劇中のマフィア情勢が複雑だし、登場人物が多すぎて一度ですべてを理解することは難しい。だが、裏を返せば見た回数を重ねれば重ねるほど味の出る作品であることは間違いないような気がする。何度でも見返したい。