すー

ゴッドファーザーのすーのレビュー・感想・評価

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)
4.5
 光と闇の操り方が類を見ないほど緻密に計算されていてため息が出るほど素晴らしい!観る前はマフィアの映画だからきっと始終おどろおどろしいのだろうと力んでいたのだが、緩急をつけてしかし無駄なく彼らの世界の明暗を描き分けていくので自然とスクリーンに惹き込まれてしまう。

 自然光が照らす昼の世界では、例えば華やかな結婚式やイノセントな孫と菜園の中で戯れるシーン、木陰が万華鏡のように家族を照らしているような一瞬にさえも観ているものはうっとりと目を奪われ、長閑な日常に癒される。
 対して黒いシルエットが動く闇の世界では、いつ誰が襲ってくるかもやわからない緊張感があり、一切油断できない裏社会を見事に表現する。ある夜、病院前で見張り番をしているマイケルに、黒い影の警察が近寄ってきて、一瞬差し込む光がその顔を浮かび上がらせた時は震え上がった。

 また、数々の殺しのシーンも大変芸術的であった。私は血も争いも苦手なので殺害のシーンは極力観たくない人間なのだが、この映画はレベルが違いすぎた。最初は怖くて細めていた目もいつの間にか見開いてしまう程の力を持っている。

 役者の演技も見事である。マイケルがどんどんと表の社会の人間から裏の社会の人間に変わり果てていくところが悲しくなる。最後に妻を前に扉が閉められるシーンがあり、とても象徴的だった。

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 強いて0.5マイナスになる理由を挙げるのならば、音楽があまりにも日本のバラエティが使い古してしまったために、ちょっと違和感があったこと。また、登場人物が多すぎたためwikipediaや相関図をまとめたサイトを参照しながら映画を見進めていた。麻薬がダメっていうのはゴッドファーザー、筋が通っているけれども、そもそも暗殺や脅しで解決しようとする姿勢から肯定できない。

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 印象に残っている殺しのシーンを二つほど記録したい。(ターゲットらは特に主要な人物ではないが…)
1・幹部の男がススキ畑が広がる道で車を止め、外で一服をする。しかし彼が車に背を向けている様子から不穏な気配を察する。そして一気にカメラは引きで車の側面を映し出す。運転席にターゲットが前を向いて座っていると、突如バックシートから拳銃が突き出され、数発ターゲットの後頭部に弾が撃ち込まれる。そして一服を終えた幹部(命令者)が、バックシートに潜んでいた暗殺者から平然とした様子でケーキを受け取るのだ。
2・またしも車内での殺害だが、交渉の末うまく生き延びられると安心しきった助手席のターゲットを裏切ってバックシートから絞殺する。カメラは車の正面から寄りで移し、ターゲットが苦しむ様子を車の窓ガラスが何度も蹴られ割れていくことで表現した。
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