Torichock

ロッキーのTorichockのレビュー・感想・評価

ロッキー(1976年製作の映画)
4.4
「ROCKY/ロッキー」

言わずと知れたボクシング映画の傑作でありながら、僕の"まだ観ていない過去の傑作シリーズ"にも常にストックされていたシリーズ。
年末の「CREED」に向け、重い腰を上げて、ついに鑑賞を始めました。
ボクシング映画といえば、昨年末に「百円の恋」を見に行けず、年明けに行われるランキング発表会に入れられなかったので、今年の「CREED」はどうしても観ておきたいと思い、「ロッキー」シリーズに手を出しました。

スタローンという俳優に関しては、僕はある程度の距離を取っている俳優でした。
「エクスペンダブルズ」シリーズはもれなく観てるし、「ランボー」も何回か見たことがあります。が、やはり僕の守備範囲外というか、彼の嗜好に沿った作品群が、僕にはフィットしなかったんです。

上等と言える作風ではないですし、ラストの"エイドリアーン!!!"のシーンは、なんかコメディとかパロディを見過ぎていて、感動的であるはずなのに、

"あぁ、これがウッチャンとかが良くやってたやつの元ネタなのか"

という、なんとも冷めた感情で眺めていました。

しかしこの映画、スタローンの生い立ちに重ねると非常に味わい深く興味深い映画なんですね。
シチリアをルーツに持つイタリア系アメリカ人の父とロシア系ユダヤ人の母の血を受け継ぎ、どこが独特の人種感を持ったスタローンは、やはりどの映画においても異彩を放っていたと思うんです。(その異彩の雰囲気こそが、スタローン映画の好き嫌いをより濃厚にしてるとも言えなくはないが)
この映画の主人公ロッキー・バルボアも、ボクシングという才能を持ちながらも、ボクシングとの距離を適度に保つ、その日暮らしの男。
それは、映画俳優や映画監督としての可能性と未来を持った若き日のスタローンが、金のためにポルノ映画やボディガードで生計を立てながら役者をしていた本人の人生につながります。
また、偶然的にアポロ・クリードの目に止まり、世紀の一戦を交えることになり、愛するもののために戦い、勝ち負けを超えて彼の人生を大きく変えた「ロッキー」という本作のストーリーラインは、スタローン自身が本作の脚本を書き上げ、彼自身が主役として演じきったこの映画は、彼の人生を決定付ける作品になったという点でもつながると思うんです
この先の「ロッキーシリーズ」の展開も、本作(1)で名声を得て、次作(2)では一度置いたグローブを取り、もう一度真剣勝負の世界に身を投じ、(3)では名声や金に埋もれて、力をなくしてしまったりするストーリーになるわけです。
それは、「ロッキー(1)」でアカデミー賞などを獲得したにも関わらず、それ以降の続編で評価は、自身でメガフォンを取ったはいいものの、その先は下降線を辿るシリーズになってしまったという点においても、どこかロッキーというキャラクターと、スタローンのキャリアが重なり合う物語だと感じました。

プロの役者として、一度背負ってしまった役に、一生呪われてしまうという事はあるのではないかと思います。
その典型的な俳優こそ、スタローンなのでないしょうか?

今でこそ、ジャンル映画俳優として、スタローンは自身の地位を確立してると思いますが、僕はやはり、そんなスタローンを気の毒にさえ思うんです。
スタローンにとっての1番のピークはなんだったのか?それは彼の心にしかわかりません。

しかし、誰にだってあるはずです。
到達しようと血肉を滾らし、走り回る時こそが、一番充実していたのではないか?という、通過点こそが最も幸福な時間だったという事が。(ハリソン・フォードは、ハン・ソロ以外はヤル気がないのと一緒、ではないか)
この「ロッキー」という作品はきっと、ロッキー・バルボアが最も光り輝いた煌めきの瞬間を捉えた物語であり、俳優シルヴェスター・スタローンにとっても最も幸福な煌めきだったのではないでしょうか?

だからこそ、この作品は永遠の名作であり、スタローンにとっては、永遠の呪いであり、永遠に語り継がれる物語なのでしょう。

宿敵アポロ・クリードの息子を育てるという物語を通して、ロッキー・バルボア
という役の呪いに、もう一度身を委ねた漢シルヴェスター・スタローンの、一世一代をかけた大勝負に、期待に胸を膨らませて、「CREED チャンプを継ぐ者」の開始のゴングを待ってます。