つかれぐま

ロッキーのつかれぐまのレビュー・感想・評価

ロッキー(1976年製作の映画)
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美しいお伽話だ。
そんなあり得ない話のまわりを、現実という細いロウソクの灯で囲む。灯が一本ずつ増えていき、最後には人の心を暖めてくれる。寒くなるこの時期に見直したい名作。

「熱くなれる」シリーズにあって、この第一作は「暖かくなる」作品だ。貧しく汚いフィラデルフィアに生きるロッキー、エイドリアン、ポーリー、ミッキー。皆、根は優しいのに心が荒みどこまでも人間臭い。スポーツ映画というジャンルに収まらない人間ドラマであり、純愛の映画だ。2人が結ばれるシーンの実にナイーブなこと。こんな繊細な脚本をあのスタローンが自分で書いたのかと驚く。

スケートリンクの初デート、
ミッキーを追いかけたロッキー。
私のお気に入り場面たちを振り返ると、そこに映る人は少なくそして小さい。伝わってくるのは孤独だ。だからこそ皆が寄り添って生きていくのだよ、という暖かさ。冷え切った食肉庫から戻れば、エイドリアンの待つ暖かな部屋。二作目以降は消失してしまうが、そんな暖かさが本作には詰まっている。

あのスケートリンクは、低予算でエキストラが雇えなかったかららしい。偶然から生まれた名シーンだ。