次男

ロッキーの次男のレビュー・感想・評価

ロッキー(1976年製作の映画)
3.9
試合までのドラマの組み方も、練習の点描のスタイリッシュさも、試合の盛り上げ方も、きっと現代のボクシング映画の方がテクニカルだと思うし、なんだったらちょっと全体的に足りない気もするのに、なんで泣いてるの僕は!と思いました。

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や、もちろんすごい練習してるんやけど、けっこうエイドリアンとソファ座ってのんびりしてたりを映してるから、例えば『はじめの一歩』の鷹村vsホークのときの鷹村みたいなギラギラもないし、試合もけっこうサクサク進むんよ、試合描写自体短いし。

なのに、なんでかなー。なんでこんなにグッときてるのかなーと思い返した末、なんかこう、勝因は汚さなのかなーと思った。(「今観ると」、という前提だけど)
いっぱい練習したから感動したのでもなく、因縁の相手とのドラマの末の戦いだから感動したのでもなく。

ロッキーの住んでる時代の、町の、部屋の汚さが、とっても生々しい。『どついたるねん』も汚さが素敵だったけど、それ以上に、いかんともし難い汚さがあって。練習着とかめっちゃ汚いし、部屋にあるサンドバッグはボロボロの布団でこれも汚いし、エイドリアンとの恋愛もなんかこう言い方悪いけど日陰者同士で見た目は麗しくないし、七面鳥投げ捨てたり罵詈雑言吐く汚い兄がいたり、有名な生卵5個飲むところも卵が糸引いて汚くてそれを荒々しく袖で拭いて汚いし、精肉サンドバッグも血がバンデージについてとても汚いし、ジョギングする街並みもそりゃあもう汚いです。ロッカーを取り上げられたことをトレーナーに責め立てるのも、なんか最後の最後のプライドを汚されたからなのかな、みみっちくて汚い。生い立ちとか苦節を語るよりも圧倒的に説得力のある汚さ。が、ボディブローのようにじわじわと刷り込まれてたのかな。「アメリカン・ドリーム」とかそんな成り上がりというより、何かひとつも全うできないような底辺の存在が、成し遂げた、やりきったということだけで、その咆哮だけで、グッときてしまったのだと思う。そんなの、言わずもがなだけど。

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スタローン氏も、ロッキーと同じような境遇を勝ち得た人だったのか。そりゃ説得力あるな。
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