朱音

ロッキーの朱音のネタバレレビュー・内容・結末

ロッキー(1976年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

勝つ為の、ではなく、負けない為の闘い。と言うのが何より最高のメッセージ。

折をみては定期的に鑑賞したくなる本作。
シルヴェスター・スタローンという映画人の実人生とも深くリンクしたロッキー・バルボアというキャラクターが抱える実存的なフラストレーションはとても普遍的なものだし、それを解消する為の闘いにおいて、彼が導き出した在り方は、親愛に溢れている。

フィラデルフィアの街で生きる人々、うらぶれた街の、粗野で、不器用な、ロッキーを含めた誰もが皆、それぞれに弱さや、ダメな所を持っていて、だけど何処か憎めない人間たちが、ロッキーに訪れたこの契機を通じて少しずつ、だけど確実に、変化してゆく様が魅力的に描かれている。
アメリカン・ニューシネマ的な文脈で語られる事が多い本作だが、リアリスティックな問題提起に端を発した物語が辿る道筋は、現代的なリテラシーを通して観るとファンタジーに溢れており、アメリカン・ニューシネマに代表される作家達が一貫して否定し続けたアメリカン・ドリームを大々的に肯定したラストに表れるように、本質的には似て非なるものである事が分かる。


バージェス・メレディス演じる老トレーナーのミッキーとの、互いに不器用過ぎる和解のシーンは何度観ても泣いてしまう。

羽佐間道夫による吹き替え版も素晴らしく、味わいがあって、甲乙つけがたい魅力がある。
朱音

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