おーたむ

ルパン三世 カリオストロの城のおーたむのレビュー・感想・評価

4.6
胸を張ってファンだと言えるほどのファンではありませんが、多くの人がそうであるように、私は宮崎駿監督の作品が好きです(と言いつつ、「ハウルの動く城」以降の長編三作は、見たことないのですが)。
長らく見ていなかった宮崎駿作品をまた見返してみようと思い立ち、まずは「カリオストロの城」から見てみました。

見始めてすぐに感じるのですが、本作の画面は、躍動感が凄いですね。
アニメらしく、動きの大きさと緩急を存分に生かしたアクションが、ハッタリ満載のルパン三世や、彼と同じ世界観を生きるキャラクターたちとよく合っていて、実に生き生きとしています。
また、近くのものは速く、遠くのものは遅く動く動かし方が遠近感を際立たせていて、画面の中に奥行きも感じます。
現代のフルCGアニメとはまた違った立体感があり、単純に画面を眺めてるだけでも楽しかったです。
ヌルヌル動くのも大事かもしれませんが、それ以上に大事なのは見せ方だってことが、よくわかりますね。

話は、もはや言うまでもない周知のストーリーで、囚われの姫を、騎士ならぬ怪盗が救い出す(というか盗み出す)物語ですが、そういう古典的な物語を魅力的に見せる雰囲気作りは、長編デビュー作とはいえ、すでに天才を感じさせます。
独自の歴史を持つ公国、水に囲まれた古城、影の軍団、時計塔、失われた文明など、ノスタルジーとロマンを喚起させる装置が、たくさんです。
今見ると、純真の具現化みたいなクラリスのキャラクターは、さすがにやりすぎのような気もしますが、彼女の健気さが何故だか琴線に引っ掛かってくるのも確かで、結局魅せられちゃいます。
まあ、こういう現実離れした人物を、違和感なく作品に溶け込ませられるのは、アニメだからこそかもしれませんね。
クラリスは嫌いじゃない…っていうか、むしろ好きなキャラクターですけど、なんつーか、眩しくて直視できない(笑)

最後は、アニメ史はおろか日本映画史にも燦然と残るとっつぁんの名台詞が、これ以上ないくらい美しく物語にピリオドを打っていて、徹頭徹尾面白い作品だったなと思わせられます。
古きよき時代の空気も、良い塩梅の味になっていますし、やっぱり定期的に見たくなる作品ですね。
傑作だと思います。
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