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プレタポルテのpikaのレビュー・感想・評価

プレタポルテ(1994年製作の映画)
5.0
やー、アルトマン凄いわー、めちゃくちゃ面白かった!!
めちゃくちゃ笑ったのに最後にほんわかじんわりと閉じられて余韻が心地良い!

ファッション界を舞台に起きた殺人事件を発端とするドラマで、映画のトーンとしては百花繚乱な娯楽性を孕んでいるのに細かく丁寧なリアリズムが生きているので見応えが半端ない。
主役不在の群像劇というところも、個々のエピソードに映画的なオチらしいオチはない展開も、事件のギャグめいた撮り方も、それこそが人生、というような生々しさがあり、キャラクター達が映画のために存在しているのではなく、そこに生きていて、その瞬間をただカメラで切り取っただけだと思わせるようなリアリティがある。

俯瞰的な視点がシニカルに見えるが故ブラックユーモアに見えてしまうが(それもまた楽しい)滑稽であり美しくもあり、そして人生のそんな瞬間は儚いものだと言うような、ファッションの流行り廃りや競争社会にフォーカスして皮肉に皮肉を重ねながらもすべてを肯定している視点がとても暖かい。
PTAで感じたこの感覚はアルトマンから受け継いだものなのか。

キャラクターひとりひとりが人間のあるあるな側面を表現している象徴性も魅力的で、全員ファッションよりも恋愛やセックスに夢中だったり他人を出し抜こうとするばかりで、本質的なところよりも自分本位な欲望が先行しているっつー皮肉は「ザ・プレイヤー」から地続きなアルトマンらしさとも言える側面を感じるが、「ファッションショーは、まるでサーカスのようだ!」と今作を閃いたことから見えるように、どすグロさよりも成功や華やかさの影にある人間臭さのようなものが滲み出ているため、賛美ほど行かなくてもファッキンな視点は感じられない。
ラストの衝撃や看板に繋がる下りなど、富裕層のためのようなシャレオツ人種にしか用のないもの、なんてイメージのある世界を、全ての人にとって平等なんだと言う価値観へ誘導するメッセージが何とも粋だし、商業主義を皮肉りながら金のために生き残るくらいなら、というアルトマンのプライドや情熱も迸っていて素晴らしい二重構造。それを褒めると劇中のような滑稽な人間になってしまうようで閉口させてしまう居心地の悪さもニクイ笑

当時ハリウッドでノリに乗ってた大スターだったジュリア・ロバーツやティム・ロビンスが添え物のような完全な脇役になるくらい豪華過ぎるキャスティングに加え、役者のフィルモグラフィーを使ったネタを盛り込んだりしていて楽しい。往年のスター達の勿体無い使い方がむしろ効果的ってのもアルトマンゆえ、というのがカッコいい。
群像劇としてもファッションショーが合間に挟まれることでギュウギュウにならず全体的にゆったりとしたテンポになっていてとても見やすい。画面が常にガチャガチャしている分、ドラマがシンプルであることが引き立てあっているのも良い。
一分の隙も文句もない傑作!素晴らしい!!
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