♪ 君は、真夜中に目覚める
奇妙な夢が寝付きを悪くさせる
少し汗ばんだほっぺに髪が纏はりついてる
セセセセセセセックス。
このタイトルだけでドキドキしちゃいますね。「おいおい中学生じゃあないんだから」とツッコまれそうですが、この単語には隠微な魔力が秘められているのです。
劇場公開時ならもっと刺激的だったんでしょう。
昭和から平成に変わりゆく時代。実質的なヘアヌード解禁の2年前。“毛”が見えるだけで「猥褻」と言われる時代でした。
今では考えられない話ですよね。
ネットで検索すれば無修正のアレやコレやが観れてしまう時代ですからね。
だから、物語だって同じ感覚。
倒錯した趣味が出てきますけど、今の感覚で捉えちゃうと児戯に等しく。「どんだけ初心(うぶ)なのかしら」と僕の中のオナン・スペルマーメイド(桜井青でも可)が高笑いしそうです。
でも、これが監督さんのデビュー作なんですよね。とてもそうとは思えない筆致でした。瑞々しくもあり、計算されたような洗練さもあり。このバランスは熟練でも難しいと思います。
だから、一撃がかなり重いんですよ。
正直なところ、未婚者と既婚者では“見える世界”が違うのです。夫婦の仲は他人では分かりません。本作の持つ多重的な“味わい”は自身の経験に因るところが大きいのです。
また、役者さんの持ち味を十分に出せるのが名監督の証。本作も同様に主人公四人の魅力(というか人間的にクソな部分)がググっと引き出されていました。
特にアンディ・マクダウェルに対する印象が前半と後半でガラリと変わるのは、監督さんの意図したところだと思います。この辺りが名監督と呼ばれる所以なのでしょう。
まあ、そんなわけで。
刺激的な題材(1989年当時)を用いて描かれた男女の形。酸いも甘いもかみ分けてからの鑑賞をオススメしますが、結婚生活の予習として捉えるのもアリかもしれません。少なくとも浮気してから気付いても手遅れですからね。