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バンビのnaoズfirmのレビュー・感想・評価

バンビ(1942年製作の映画)
3.6

圧倒的な画力🎬

ストーリーは森の王様の雄鹿を父に持つ主人公が立派な大人へと成長する姿を描いた作品でした。今作は低予算のダンボと比べ物にならないくらい、画面に描かれる全てが生きているようにしか見えない迫力でした。製作自体は実はダンボより先に着手されていましたが、本物の鹿をスタジオに連れてきてアニメーターに観察させるなどかなり熱い情熱を注いだ作品です。動物はもちろんのこと、森・木・風・花・空・雪とかもう自然の全てが凄い生き生きと描かれていました。動物や自然のリアルさを極限までリアルに描きながらも、アニメ的、コミック的な表情や展開も両立させた映画です。そのバランスが絶妙であり、極端なストーリーの展開よりも動物たちや自然から溢れ出る生命力や成長の過程を神秘的に、精巧に描くことで物語を動かしていきます。画面の奥行きも感じ取ることができまるで自分がその中にいるような感覚になりました。そして今作は日本漫画界の巨匠である手塚治虫がバンビが日本で上映されてから100回以上映画館に通って狂ったように観たと言うエピソードで有名です。

"父子の絆"
主人公バンビの父親は森の王様です。多くを語らず、威厳があり、みんなに信頼されています。バンビは彼の息子なので、森の王子ということですが、父とは違い甘えん坊だったり、シャイだったりと頼りない性格でした。そんな彼に「母の死」という試練が課されます。それをきっかけに、父は息子に王位を継がせるために王とは何か、王の資質とは何かを叩き込みます。時には厳しく、時には優しい父の想いを受け止め、頼りなかったバンビは立派な鹿に成長し、バンビは新しい森の王様になりました。

"モーション"
バンビが歩く可愛さ、とんすけ達とのふれあいで楽しそうに時折不安そうに動き回るシーンは至福です。このシーンは人間の子どもの動きを動物に置き換えた「あるある」な描写でもあり、一方で動物としてのリアリティを全く失っていない。表情が豊かで感情移入がしやすく、ストーリーには動きが全くないよう、ちょっとしたシーンの連続でありがならも、いつの間にかバンビの虜になってしまいましたね。感情移入し虜になってしまってからこそ、彼が母親を失った時の喪失感を他人事でなくバンビとともに感じることができました。
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