夫の出征中に妊娠した女性の堕胎を手伝い、娼婦に部屋を貸して報酬を得ていたことで、処刑された実在の女性の話。
夫が戦争に行っている間の妊娠といってもさまざまで、不倫だけではない。
ナチス占領下のフランスではドイツ兵による暴力での妊娠や、ドイツ兵相手の街娼、ドイツ兵ではないにしろ力ずくによる妊娠など、女性の立場の弱さが浮き彫りになる。
堕胎だけではなく、街娼に仕事をする部屋を貸すなど、やり手になっていくマリー。
自分の手で稼ぎ、生活を豊かにしていくことで、夫とのパワーバランスが崩れていく。
マリーが若い男と堂々と不倫をしても何も言えない夫。
おとなしかったマリーが自分の才能に気づき、ずる賢くなっていくさまを、イザベル・ユペールが好演。
マリーは女性を救いたいという強い信念はないにせよ、全てお金のためというわけでもなかった。強欲になっていったけど、女同士という当時の弱いもの同士の連帯感はあった。
しかし、お金は自分の立ち位置を優位にしてくれる。
キリスト教に基づいた倫理観に苛まれることがあっても、豪遊の魅力にかきけされ、一粒の思慮も風のように消えていく。
ドイツに占領されたフランスでは、国をまとめあげるために見せしめが必要だった。
現在も、アメリカを始め世界中でいわゆる中絶禁止法の是非が問われている。その根底には、妊娠も中絶も「女性の問題」として見えないものに蓋をしている男尊女卑の考えがある。まだまだ社会の要人は男性が多い。女性は男性の道具ではないというのに。
高校生のときからタイトルが気になっていた映画をついに見た。
高校生のときに見ても、背景への理解が薄く、なんとなくしかわからなかったと思うので、大人になった今の鑑賞で良かったと思う。