ブタブタ

悪魔とダニエル・ジョンストンのブタブタのレビュー・感想・評価

5.0
「ビートルズを再結成し僕のバックバンドに(オノ・ヨーコに連絡しろ)」
「マウンテンデューの広報大使に」
みんな飲んでるマウンテンデュー🎶
飲む以外やる事がない🎶
悪魔だ!悪魔だ!悪魔も飲んでるマウンテンデュ~•*¨*•.¸¸♬
【精神病院のダニエル・ジョンストンより】

ダニエル・ジョンストンの歌を聴いたのは、この映画が初めて。
何かヘドウィグに似てるなと。
歌声も詩も聴いてて切ない気持ちになるのも。
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』でヘドウィグはこの世の何処かにいる自分の半身〝片割れ〟を探し求めていたけどダニエル・ジョンストンは〝永遠の恋人〟ローリーに対する想いは初めから報われず、その喪失感とひたすらローリーへの愛を歌にしたダニエルは安易にロマンティストとかそんなレベルではなくて、どうして一人の人をそこ迄思えるんだろうな、と。
「ローリーと結ばれない事でローリーは永遠の存在になった」と本人も言ってるけど、ダニエルにとってローリーはミューズであり彼にしか見えない「悪魔」と並ぶ創作の源だったのかな。
『ヘドウィグ』はフィクションだけど『ダニエル』はドキュメンタリーだし。
ローファイ・オルタナティブ・フォーク・ミュージシャンでアウトサイダー・アーティストのダニエル・ジョンストンの半生のドキュメンタリー。
カート・コバーンがダニエル・ジョンストンのTシャツを着てて一気に有名になったらしいけど音楽については全く彼の事を知らず。
目が飛び出したカエルや宇宙服や様々な扮装のアヒル等のアートから知って、自分はダニエル・ジョンストンの絵のファン。
銀座のヴァニラ画廊で2017年に個展『HI,How are you?』2020年に追悼展『The STORY OF AN ARTIST』が開催されたけど何方も行けなかった。

親友でマネージャーとしてダニエルを献身的に支えたジェフ・タルタコフみたいな人がいたからダニエル・ジョンストンは後世に名を残したんだろうな、とも。
カフカにマックス・ブロートがいたみたいに。
大手レコード会社と契約に漕ぎ着けた正に其の矢先に喧嘩別れしてしまうもジェフはダニエルの初期作品のレーベル、ストレス・レコーズを主催しててネットではなく電話注文で一個一個ダニエルのカセットのマスターテープからダビングして郵便で発送してるの見てなんていい人なんだろうと泣けた。
結局ジェフとのイザコザから(それだけでないけど)大手レコード会社との契約は売り出すタイミングを逃し5800枚しか売れなかった。

ジェフだけでなく両親も友達も周りの人達がみんなダニエルの事を愛してて、彼の才能や薬物中毒に病気も含めて「彼を何とかしたい」と思いながらもその全てを含めて彼なんだと、諦めにも似た気持ちでダニエルを見守ってたのが切ないし悲しくもあり同時に不思議と暖かい気持ちにもなる。
ダニエルよかったな(笑)と。
音楽やアートをやる人にとっての今最大のツールはyoutubeを始めとするSNSだろうけどダニエル・ジョンストンはカセットテープ。
VHSテープを偏愛する映画好きみたいにダニエル・ジョンストンにとってカセットテープは単なる音楽媒体ではなくて自分の作品、芸術、魂を込める「箱」としてそれ自体が(カセットテープ含めて)一つの作品だったと思う。
なのでストレス・レコーズで一個一個手作業でダニエルの「カセットテープ」を売り続けるジェフはダニエルの意思やアーティストとしての本質みたいな物が本当に分かってて且つダニエルの事が本当に好きなんだろうなと。

躁鬱病に統合失調症に双極性障害という病に加えて薬物依存等、その半生は想像を絶する苦しみがあった(其れを世話する周囲の人達も)けど彼の苦しみはそれだけではなくて、「音楽」「絵」「芸術」のダニエルの才能は生まれ持った「ギフト」であり、人間一人分の許容量をはるかに超えてしまった物なのだと思う。

凄い絵って見た瞬間好きになる。
今度日本で展覧会やる時は絶対に見に行きたい。
ブタブタ

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