ナツミオ

戦争のはらわたのナツミオのレビュー・感想・評価

戦争のはらわた(1977年製作の映画)
4.0
DVD鑑賞
過去何回も観ているお気に入り。
DVDを見つけたので久しぶりに鑑賞、レビュー未投稿だった戦争映画の傑作‼️

『諸君、あの男の敗北を喜ぶな。世界は立ち上がり奴を阻止した。だが奴を生んだメス犬がまた発情している。』
〜ベルトルト・ブレヒト

原題 『Cross of Iron』

1977年英・西独作品
監督 サム・ペキンパー
製作 ウォルフ・C・ハルトウィッヒ
脚本 ジュリアス・J・エプスタイン ハーバート・アスモディ
撮影 ジョン・コキロン
音楽 アーネスト・ゴールド
出演 ジェームズ・コバーン ジェームズ・メイソン マクシミリアン・シェル センタ・バーガー

(あらすじ〜DVDパッケージより)
第二次大戦中のロシア戦線。
1943年ソ連・タマニ半島。
(黒海、アゾフ海に面するロシア南部の半島)
ドイツ軍はソ連軍の猛攻に劣勢を強いられ、ブランド大佐(メイソン)率いる前線基地もジリジリと後退を続けていた。そんな折、プロイセン貴族出身であるシュトランスキー大尉(シェル)が赴任してくる。傲慢で名誉欲の強い彼の目的は、"鉄十字勲章“を手に入れること。
そんな彼に反発する百戦錬磨の軍人シュタイナー伍長(コバーン)は、彼と対立の様相を深めていく。やがて、ドイツ軍はさらなる劣勢に追いやられ、ついに大佐から退却命令が下される。だが、シュトランスキーの策略により、シュタイナーの部隊は置き去りにされ、敵陣地の中で孤立。決死の脱出を試みるが、部下たちは次々と戦場に散っていく…
バイオレンスの巨匠サム・ペキンパー監督が描く傑作戦争映画。
スローモーションを使用した凄惨な戦闘シーン、極限状態に晒された男たちの人間ドラマが観るものに衝撃を与える。
ジェームズ・コバーン、マクシミリアン・シェルら名優たちが迫真の熱演を見せる。

久々の鑑賞だが、面白かった‼️
マニアの間ではカルト的人気のあるペキンパー監督の戦争アクション、人間ドラマ。

主人公側が劣勢なドイツ国防軍側であり塹壕内での休息や軍歌、酒、戦友たちとの語らいなども描かれ、本国ドイツでは『サウンド・オブ・ミュージック』以来の興行成績をあげた。
米国ではSW Ep4の公開と重なり興行的には不運。

ジェームズ・コバーンが歴戦の古参兵シュタイナー伍長(曹長)役を渋く演じる。

敵役はドイツの名優マクシミリアン・シェルが原題にもなった"鉄十字勲章”に取り憑かれたプロイセン貴族シュトランスキー大尉を雰囲気バッチリで演じている。

中隊長ブランド大佐に英・名優ジェームズ・メイソン。
過去当り役の独軍ロンメル将軍役(『砂漠の鬼将軍』、『砂漠の鼠』)からは精悍さが消えだが、風格ある指揮官役。
その副官キーゼル大尉役にデビッド・ワーナー。
後半、ブランド大佐から「君は次の時代に必要な人材だから、脱出せよ」との命令に逆らうが、説得されるシーンは胸熱。

ペキンパー監督の特徴である、暴力シーン、スローモーションの多用で戦闘シーンは迫力ある。

印象的なシーン
・ソ連の少年兵を捕虜にして助け塹壕内でシュタイナーたちが匿い面倒を見る。シュタイナーが懐いた少年兵からハーモニカを受け取るところ。

・負傷したシュタイナーが後方の病院に入院し、看護婦エヴァとの束の間の幸せ。

・病院に慰問に来た将軍がある負傷兵と握手しようとするが、右手の先が無く、左手を出すが左手も無い。負傷兵は足を上げて差し出す。

・看護婦とダンスをする負傷兵が戦友に見え近づくシュタイナー。
振り返った兵隊の顔には大きな傷跡が……

・病院で幻影を見て錯乱するシュタイナー

・ソ連軍の攻勢で敵陣に取り残されたシュタイナーたちの小隊が辛くも脱出するシーン。
敵戦車T-34に肉薄し地雷で撃破、その後の廃墟の工場での戦い。

・橋を守るソ連兵を襲撃成功してからの敵女性部隊との遭遇と事件。

・撤退する独軍トラックがぬかるみを走る中、味方の死体を踏みつけていくシーン。

・オープニングとエンドロールで挟まれる当時の記録映像。

・ラスト、シュタイナーの笑い声と、「Oh, Shit...」という呟きのセリフ。

・音楽は、アーネスト・ゴールド
(『渚にて』、『栄光への脱出』)
オーストリア出身のユダヤ系。
ナチスによるオーストリア併合を期に米国に移住。
作品をドラマティックに盛り上げる劇伴。

戦争アクションの描写も良いが、それだけではない、厭戦ムードが漂う、反戦映画でもある傑作作品。
ナツミオ

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