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鰐 ワニのmareのレビュー・感想・評価

鰐 ワニ(1996年製作の映画)
3.0
キム・ギドクがどういう監督かまだよくわかってないが、デビュー作のこの潔いタイトルと言葉数少ない暴力の積み重ねが凄惨さをより際立たせる作風だった。絶望に覆い尽くされた状況、ほんの少しの隙間から芽生える救いにも似た愛情はいつしか自然に流されるように平穏な瞬間を生み出す。不器用ながらに必死にきっかけを掴もうと、全てが空回りしながら刻まれていく日々。こんな世界でも水の中の浮遊感と同じく一切の力を必要としない諦めに近い解放の瞬間、その描き方は美しく同時に願いでもあったように思える。タブーを恐れない汚れた世界からの脱出であった。
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