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サボテンの花のtukinoのレビュー・感想・評価

サボテンの花(1969年製作の映画)
4.7
冒頭からトニー役ゴールディ・ホーンの魅力全開。ピクシーカットのヘアスタイルに愛らしい真ん丸の瞳、60'sファッションも可愛らしいまるで妖精の様なその絶対的チャーミングさに初っ端から魅了されまくる。彼女のデビュー間もない作品だが、名コメディエンヌたる才能は既に今作から遺憾無く発揮されていた。
偽装不倫から物語が発展していく大人の行き違いラブコメディ。嘘が嘘を呼ぶ、正にシェイクスピアを彷彿させる喜劇が面白い。当然I・A・L・ダイアモンドの秀逸な脚本も然る事乍ら、全てのキャラクターが後半になるにつれ持ち前の個性を活かし更に輝いて行くのも本作の魅力の一つ。キャスティングも素晴らしい。
なんと言ってもオールドミスなステファニー役の大女優イングリッド・バーグマンの圧倒的存在感と演技力。50代とは思えぬその美貌たるや。彼女の刺々しさはサボテンの如く男性を寄せ付けず、ジュリアン曰く女性らしさの無いお堅い歯科助手。後半につれステファニーの魅力が驚く程に増していくのだが、素直になれない彼女の次第に開花する陽気で優雅な女性の姿とバーグマン本来の持つ気品さとが合わさり、ゴールディ・ホーンに負けず劣らずな愛おしいキャラクターに仕上がっている。そんな彼女に対し、結婚願望は無いが若い女性と自由な恋愛を謳歌する少し性格に難有りな歯科医師ジュリアン(ウォルター・マッソー)の行き当たりばったりに取り繕う滑稽な嘘と女性陣に翻弄される姿が良い塩梅となっていた。付き合いの長いダメな男に程手を焼くものなのだ。
無意識下でステファニーに似合う品を買って来てしまう"ミンクのストール"のシーンが素敵。ダンスシーンも最高で"歯医者のダンス"の独特な古臭さもこれまた良い。
街の若者達やレコード屋の品揃え、ヒッピースタイルなゴールディ・ホーンのラブ&ピースな思想に時代の移り変わりを感じさせる。展開毎の台詞の掛け合いも秀逸で心地良い、スクリューボール・コメディの傑作だ。