滝和也

壬生義士伝の滝和也のレビュー・感想・評価

壬生義士伝(2002年製作の映画)
4.0
会津藩お預かり
京都市中見廻り
新撰組参る!

壬生狼と呼ばれし
死をも恐れぬ剣客集団
新撰組の中にあり…
異彩を放つ漢がいた…

生きるために戦え!

「壬生義士伝」

浅田次郎原作、滝田洋二郎監督による日本アカデミー作品賞に輝くある新撰組隊士の物語である。土方を主役とする燃えよ剣がバラガキから侍になると言う夢を叶え意地を通した立志伝に近い正統派であるならば、こちらは下級武士の悲哀から生まれた哀歌(エレジー)です。

斎藤一、新撰組に生き、そして会津で官軍に敗北し明治まで生き残った男が語る、吉村貫一郎と言う漢の物語。その男は武士とはかけ離れていた。命を惜しみ、金を尊ぶ。だがそれは下級武士の家に生まれ、その余りの貧困から妻子を養うため、脱藩、新撰組に入隊した漢が生きるために戦うと言う生き様だった…。

斎藤一と吉村貫一郎と言う対極にいる二人がクローズアップされ物語が描かれます。無頼かつ人生を白眼視し、死に場所を求めるような斎藤一と妻子に金を送るため、命を惜しみながら生きるために戦う吉村貫一郎。その対比を描きながら新撰組の隆盛が語られる前半。この対比が素晴らしく、吉村貫一郎の愛する人を生かすために人を切ると言う姿がまた物悲しい…。また死を纏う斎藤一が愛するものを救うために取った行動が悲劇に連なる辺りがまた悲しく…(T_T) 

そして後半…御陵衛士伊東甲子太郎暗殺の油小路事件から鳥羽伏見の戦いへ…新撰組の転落が始まった時…二人の友情が芽生え、互いを心配する様になった時、クライマックスが訪れる…。この握り飯の下りからは泣ける…。 

更に優しき吉村貫一郎が名乗りを上げ、二刀を掲げ、爆炎の中官軍に突撃する姿は正に漢!その手前から描かれていた吉村貫一郎のもう一つの姿である、侍としての義の姿が爆発するシーン。下級武士でも武士は武士、南部藩の男の持つ義という筋を通さんとする姿に涙が…。

その後、悲劇は続くが…その悲しみは家族への愛と義と言う2つの心を持たざる得なかった侍と言う悲しくも理不尽な運命を持つ存在、また不器用過ぎる生き方しかできなかった愛すべき優しき漢への哀歌であるようでした…。(T_T)

斎藤一に佐藤浩市、吉村貫一郎に中井貴一。プライベートでも親友である二人の演技は正に息があっていて、素晴らしい。無頼かつふてぶてしい感じは佐藤浩市ならではですし、コメディとシリアスの二面性のある複雑な役は中井貴一の巧さが光る。殺陣も見事にこなしていて、強さが二人とも滲み出てます(^^)

この二人…二世俳優として生まれ、方や早くに父佐田啓二を亡くし、伝説化、方や仲が悪く、生きる伝説となった三國連太郎を父に持つと言う苦労を背負った方々で…その二人の意地の演技を見た気がします。正に見事です。

佐藤浩市の相手役ぬいさんに中谷美紀さん。可愛げのある役にピタリとハマり、その姿は…醜女では絶対ない(笑)劇中で斎藤一が醜女と呼ぶんですよ…。原作とはイメージが違うのかな(笑)中井貴一の相手には夏川結衣さん。落ち着きある美人で…それは働きますよね、こんな方不幸にしては男が廃りますから…と思える演出がされてました。

時代劇の灯火を消さぬ様な見事なエンターテイメントの佳作に仕上がっており、その新撰組と言う人気のある作品の中でも悲哀を見事に表した作品だと思います。お暇な時に是非。

追記…因みに後の大河で山南を好演した堺雅人が沖田総司役。殺陣も見事でした。で…演技はと言うと山南とおんなじ(笑)また佐藤浩市さんは大河では芹沢鴨で…(笑)どうもチラつく(笑)三谷幸喜は間違いなくこれ見てますね…。また佐藤浩市さんの斎藤一…牙突は使いません(笑)が…突きはお得意の様子でした(^^) 斎藤一は佐藤浩市、オダギリジョー、江口洋介とやはり格好いい方々が演じてますね(^^)

追記2…やはり薩長よりも新撰組の方が好きだなぁと。そのリリシズム、デカダンシズムに憧れますね…意地を通す姿に最近は惹かれます(^^)
滝和也

滝和也