刑期を終えて、出所したやくざ(小沢仁志)が与えられた縄張り(シマ)は歌舞伎町のミニFM局。ワゴン車で弁当屋をやりながら一人で放送を続けてきたインディーアイドルとDJを担当することに…。
異業種(テレビ局)や流行に挑戦するやくざコメディといえば映像化もされた小林信彦『唐獅子株式会社』がさきがけか。本作でもやくざとミニFM局というミスマッチ感がまずおかしくていい。
番組内で組の抗争の手打ちをしたり(狭いブースに抗争していた組の二人を並べ、一本締めまで生中継)、リスナーに答えて指の詰め方や覚醒剤のやめ方まで指導と人気を博す小沢の放送はこんな感じ…。
「こんばんわ。歌舞伎町のオアシス、大川組の準次だ。今日は番組を始める前に皆に言っておきたいことがあるんで聞いてください。ここFM89.3はヤクザだとか堅気だとか組だ抗争だ、そんな面倒臭いことは一切関係有りません。だが、もし世の中に筋の通らないことがあったらうちに相談してほしい。俺の声が枯れはててでもけじめをつけてやる。命張ってますんでそこんとこよろしく」
「はい、ゆかたんも、か弱ーい命はってます。それでは今日からはじまる新コーナー、出所だよりのコーナーにいってみましょう、ぴちょ!」
深夜放送のDJは自然とリスナーの兄貴分的な存在になるものだが、本作の小沢、まさに歌舞伎町の兄貴のDJぶり。おもしろく、ほろりともさせる快作。