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シッコのRのレビュー・感想・評価

シッコ(2007年製作の映画)
4.4
アメリカの医療保険制度にマイケルムーアが鋭くメスを入れたドキュメンタリー作品。2007年の映画なので、現在は全然ちがうことになってると思いますが、情報が古いにしてもいろいろ考えさせられる内容であるのは間違いないし、その時代のアメリカの実情を垣間見れるのでとても興味深かった。そのうえ、ちゃんとエンターテイメントしてる。ムーア氏を過激なプロパガンディストと考えてる人もたくさんいるけど、やっぱすごいなーと思う、マイケルムーアは、面白いんやからしょうがない。まずムーア氏は、冒頭で、アメリカの医療保険未加入者約5000万人のうち、数人の送る悲惨な生活を見せる。なぜ彼らが医療保険に入っていないかというと、当時のアメリカには国民皆保険がなく、みんな民間の医療保険に加入しないといけなかった。が、保険料がバカ高いうえ、持病などがあると保険を受けられない。彼らは恐ろしく高い治療費を請求されるため、病院に行くことすらできない。そのために強いられている惨めな生活を見せたうえで、でもこの映画で扱うのはこういう人たちじゃなくて、保険に入ってる人についてやねん、と。矛先を変える🤔 さて、実際保険に入ってる人たちは得をしてるのかというと、驚くべきことに、ぜんぜんそうはなってない。保険会社が雇っている専属医師の判断によって、ことごとく保険金取得を却下される。その理由は、加入時に記入不備(例えば、大したことがないと思って記入してなかった些細な既往歴を個人情報を掘り起こすことで見つけられる)であるとか、治療法があまりにも実験的すぎるとか、症状がそれほど深刻でない、などなど。そして、専属医たちが、綿密に調査を重ね、もっともな理由を掘り起こして、取得を拒否する率が高ければ高いほど、それに応じて得られる報酬も高くなっていくのである。ということで、ひとり紹介されるのが、かなり昔に、膣カンジダで塗り薬を処方された病歴があり、保険料がおりないことになった女のひと。そんなくだらない病気で……ってなったあと、保険料をゲットできなくさせる無数の病名がずらーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっとクールに画面上を流れていく。そのあまりの多さに笑った😂 笑えないんやけどね、笑わずにはいられない。そして、アメリカとの比較として登場するイギリスとフランス。この差をご覧ください。てかアメリカ人ってフランス嫌いなんやね。知らんかった笑 さらに、医療費で人生を台無しにされたインタビュイーたちが、キューバ危機の記憶の新しいキューバに訪れたときの様子。ご覧ください。そりゃおばさんも泣くよ。胸が痛いわ。そして日本に目を向けてみると……確かに国民皆保険ではあるけれども……健康体の個人事業主の方々、特に家族のいらっしゃる方々は、保険料の高さに毎年かなりの打撃を食らっているようですし、本作のアメリカの貧しい人たちの生活を見ていると、このまま貧しい国家に成り下がるであろう将来の日本を見ているようで、変にリアリティーを感じてしまう。日本国民のマジョリティーは哲学がないし、情熱がないし、無関心やし、成る可くしていま状態になっているのだが……そう考えるとアメリカってエネルギッシュに両極端な国だなーと思う。いい奴は果てしなくめちゃくちゃいい奴やけど、悪い奴は果てしなくめちゃくちゃ悪い。世界の果てまでも貪欲。だからこそ今ほどのスーパーパワーになれたのでしょう。とはいえ現在のダウ、分水嶺みたいな値段にいるのに、このひっそりとしたプライスアクションは何たることでしょう。すごい時代に突入したものだ。このまま行くとある程度の上流層の人たちすら悲惨なことになるのでは。これ以上の戦争につながらないことだけを祈りたい。おっと、話がそれました、ひと昔前の映画やけど、かなりいろいろと考えさせられる映画なので、一見の価値ありやと思います! ぜひ!
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