ちろる

青の炎のちろるのレビュー・感想・評価

青の炎(2003年製作の映画)
3.5
絶対に死ななきゃいけない人物なんているのか?
人を殺さなきゃどうしようもないことなんてあるのか?
本当の意味で憎しみを目の当たりにしていない私にとって、この作品の内容は遠い存在であり、秀一の殺人に対して否定も肯定もできる立場ではない。
ただ、いじめられっ子でも不良でもなく、ごくごく普通の少年が当たり前の日常を取り戻すために冷静な顔をして自ら穴に堕ちていく様子は切ない。

秀一たちの利用する江ノ電の「鎌倉高校前」は駅の真裏の斜面にお墓が並んでいる。
南側から海の光の反射を浴びた学生達で活気溢れる「ごく当たり前」の景色と「死」の存在が同じ画角に入るこの場所は、この物語の舞台としてとてもしっくりくる。

二ノ宮くんはまずまずとして松浦亜弥の演技の棒読みはずっと気になるけど、口をすぼめたキョトン顔は文句なしに可愛いと思う。
個人的にはあまりにアイドル顔すぎる彼女より、影のある黒澤優あたりでぐっとダークさとファムファタル感を出して欲しかったかな。

絶望しかないのに鬱ムービーにはならなかったのは、秀一と紀子との水槽のシーンや堤防を歩くシーンなど、所々にしっかりと青春映画の要素を印象的に残してくれていたからなのかもしれない。
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