青二歳

執炎の青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

執炎(1964年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

色んなところで高評価なので気になってレンタルしてみましたがハマらず残念。もう少し若い時に観たらたぶん好きだったと思う映画なんですが。素材や話の運びは“清作の妻”と似ていますし、浅丘ルリ子の狂気も見事でしたし。
【あらすじ】網元の息子と平家の落武者部落の娘が反対されながらも結婚。出兵した夫は負傷して帰還。妻の献身的なリハビリで治るもまた召集される夫。戦死の報を受け入れられない妻浅丘ルリ子の心神喪失ぶりがみどころ。という感じ。

平家の落武者て…昭和10年代でもまだ言われていたのか…?と冷めた目で見てしまうほど、やたら神秘的で説話のような演出。しかし…平家の落武者部落である浅丘ルリ子と網元の息子伊丹十三の二人が結婚を反対されるという以外に意味のない設定だと感じます。強いて言えば…“執炎”のタイトルに相応しく浅丘ルリ子の夫に対する情熱は狂おしいほどで、彼女の気質は一体なんなんだろうと躊躇ってしまうほど。もしかしたら、平家の落武者に由来する気高さとか神秘性をもって彼女の気質を説明しようとしているのかもしれません。
というのも、気になるのがこの部落に伝わる能楽です。平家ものの演目を毎年奉納しているらしく、意味ありげにもったいぶった演出がされています。家人あるいは部落で能舞台を奉納しているのか、どこか能楽の家に頼んで玄人に来てもらっているのかは分かりません。で、夫の出兵を拒んで夫に詰め寄る時に浅丘ルリ子が…なんか…狂おしく…舞う…という…
たぶんここが映画の山場のひとつなんだと思うんですけど、能楽に親しんでいる方にとっては違和感しか感じないと思うんですが如何なものでしょう。どこで着替えたのお前…と。面はひとりで付けられるものではないので、誰かにあててもらったんでしようか。まあひとりで付けたとして、浅丘ルリ子が子供の頃からシテ方に習っていたとして…うーんダメだここでもう挫ける。能楽イコール神秘的ってことなんでしょうかねえ。
ほか山と海の対比が目立ちます。能楽もここでは山の文化の雅やかな象徴のひとつなんですけど、落武者部落の娘は山の方が落ち着くらしいんですね。それでも網元の夫が出兵中は献身的に漁を手伝って、海の文化というか海側のコミュニティに馴染もう貢献しようと健気です。この辺もラストに通じていくんでしょうけれど…自分にはピンとこないというか、やり過ぎて“山”が謎すぎるミステリーゾーンに感じてしまう。夫のリハビリも山の中の小さな家で行うんですが、かつて源氏に復讐することを誓いながら傷を癒したという設定までついてくる。…もうシラけてしまうわ。

ただ浅丘ルリ子の熱演は素晴らしくてやり過ぎが似合う目力です、はい。たぶん能にハマる前の高校生くらいに観たら好きになれた気はします。伊丹十三も浅丘ルリ子に押されまくってなんとも言えないキャラクターでしたし…しかし今となってはこのもったいぶった海/山の集落の描写が余計で集中できませんでした…無念。やっぱり10代の頃にもっと色んな映画見とくべきだなあ。
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