Omizu

小さな火の歴史/くすぶりの年代の記録のOmizuのレビュー・感想・評価

4.0
【第28回カンヌ映画祭 パルムドール】
アルジェリアの3時間の大作歴史ドラマ。「灰の年」「荷車の年」「くすぶっている年」「虐殺の年」ときて、最後に1954年にアルジェリア独立戦争が勃発する直前までを描いている。その後は『アルジェの戦い』を観れば分かるのだと思う。

正規でみたわけではないのでかなり画質が悪かったのだけど、それでもアルジェリアの風景が持つダイナミズムに圧倒された。

広大な乾燥地帯、ゴツゴツとした岩山、無機質な建物とロケーションが素晴らしい。

街の広場で少年が走る姿はまるでデ・キリコのよう。

アルジェリアの苦難の歴史を詩情たっぷりに描いていて面白い。何より興味深いのは「Mad Man」と呼ばれる男が随所に登場し語り部となるシェイクスピアのような語り口だろう。

彼は他人には理解されないような突飛な言葉で語りつつも実はアルジェリア人民の代弁者でもある。

彼が己の無力さを語りながら地面に横たわる、そして彼を親のように慕う子供がまるで引き継いだように走っていくラスト。これ以上の終わり方があろうか。

終盤急に政治的要素が多くなるのは戸惑ったが、中盤までの言葉だけで説明しない映画的演出も効果的でとてもよい。

この映画の終わりである1954年からフランスからの完全独立を果たす1962年まで8年もの歳月を費やしている。そこまでくるのにどれだけの人が犠牲になったのだろうか。

アルジェリア版『ガンジー』と言っても過言ではない名作。
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