前方後円墳

心中エレジーの前方後円墳のレビュー・感想・評価

心中エレジー(2005年製作の映画)
2.0
物語の時間軸のずらしが上手く、4人の物語の絡み合いが作品に深みを与えている。
ただの不倫映画のようだが、その構成のうまさと4人の日常生活の加速的な崩れ方で緊迫感が出ている。4人が順番に切り替わるように時間軸が流れていくのではなく、その人の少し前の過去の行動がランダムに展開されていく。これがわかりやすく表現されていて、観ている者が混乱することもなく、小さなタネ明かしのように少しずつ解説してくれるように見せてくれる。この作品はその構成で成功しているのだ。

物語そのものは安直で、心中を図ろうとする田中万代(眞島秀和)と溝口京子(小山田サユリ)の動機はとても曖昧で、鑑賞者に共感で引き込もうとする部分はない。万代の妻、田中麻美(中村優子)と京子の夫、溝口勉(豊原功補)の行動もラストに向かうに連れて常軌を逸する行為となっていく。純愛のような気もするが、それぞれの屈折した偏愛にすぎない。が、この4人のもつ独特の雰囲気がその映像空間を一つの世界として作り出してしまっており、不思議な行動も妙な納得感を持たせてくれるところが面白い。特に小山田サユリは相変わらず幸の薄そうな役柄がぴったりで、切ないほどだ。
映像の色合いも抑えられたトーンで統一されていて、彼ら4人の悲しくもやわらかい感情と冷たい嫉妬がないまぜになっているのだ。