Ricola

ル・ミリオンのRicolaのレビュー・感想・評価

ル・ミリオン(1931年製作の映画)
4.0
こういった、「何はともあれ人生は素晴らしい!」といったお気楽さが根底にある映画は実にフランス映画的だと思う。

内容はある貧乏な青年が宝くじで巨額が当たったものの、その宝くじを失くしてしまい必死に探しにいくという話。


ジャック・ベッケルの「幸福の設計」と似た内容だなという印象だったが、ルネ・クレールらしさを強く感じる作品だった。(そんなに多くのクレール作品を観たわけではないが)

セリフがたまに歌になったり、状況や心情を音楽を多用し表現することで明るくて楽しい雰囲気がビシビシ伝わってくる。
そういったトーキー映画ならではの演出が光る中、サイレント映画の名残りも随所で感じる。

例えば、中古品店でのオペラ歌手の歌によって反響してシャンデリアが震えるという、視覚で感じ取り完結しうる描写。

また、口論の内容はサイレントで、頬を叩く音とBGMだけが聞こえるという上品さを感じる演出など。

サイレント映画とトーキー映画のいいとこ取りをするのが、ルネ・クレール独自の演出である気がする。

そして個人的にお気に入りの場面が、舞台に潜り込んで、主人公カップルがその歌に則ってイチャつくところである。
花吹雪なんて、その舞台の役者のためにあるはずなのに、この輝くばかりの若者たちにぴったり合っていることが、対比的に映すことでよくわかる。
本当はピンチな状況のはずなのに、二人の恋愛の幸福感をひしひしと感じる。
そんなお気楽さがかわいい。

ストーリーの単純さやオチの呆気なさがむしろこの作品のいいところで、深く考えさせられることはないけれど映画らしい楽しい演出と、人生や人間に対してより肯定的に捉えられる、底抜けの明るさが持ち味の観ていて元気をもらえるかわいい作品である。
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