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生きてるものはいないのかのMKのレビュー・感想・評価

生きてるものはいないのか(2011年製作の映画)
4.8
いやぁ、年明け早々すごい作品に出会った。
染谷将太さん主演でジャケの雰囲気から何故か園子温的なハードな作品をイメージしてしまい遠のいてしまっていたけど、不機嫌な過去で監督の関わった作品を全部観ようと思って手に取ったところ、とっても興奮して考えさせられる作品だった。

すごくどうでもいい日常、そんなやり取りから始まってものすごく退屈…でもそれは自分も含めて沢山の人が当たり前のように生きている世界。
そこから一転、作品の世界観は非日常的ではあっても当たり前に人が死んでいくことが許容された世界へ。

死が常態化した振り切った不謹慎感が涙が出るほどの笑いにつながって、いつも通りの禅問答のような、確信にせまるようで、死に直面した場面での不思議なほどフラットな会話が幽玄的でかつ彼岸と此岸が交錯してしまっていて、死生観を揺さぶられる程のシニカルな笑いがふんだんに散りばめられていた。

出演者もカッコいい人ばかり。
中でも村上淳と渋川清彦は際立ってカッコよかった。

ちょっと俗っぽいけど、トレイン・スポッティングで赤子が死んだ後に薬をキメちゃったシーンで体感した許せないようで笑ってしまう不謹慎さが垂れ流されているような、グランジ感に溢れていてめっちゃ惚れた。

ちょっとわがままなんじゃないか?
だって僕死にそうなんですよ?
わかるけど、俺だってあれじゃん?
いつ死ぬか分かんないじゃん

俺たちも死ぬかもしんないんだよ?
だってそんなの当たり前じゃないですか?
みんな死ぬのって
何にもしてないのに?
なんかしても何にもしなくても死ぬんじゃないの?

お取り込み中のところ悪いんだけど、僕死にそうなんだ

マンツーマンで死なれるの私も嫌だから

海って好き?
好きっていうほど知らないけど好きだと思う

んで、生きてるものはいないのか
になるのかな?

冒頭のできちゃった的なやりとりが陳腐化していく様もとっても興味深かった。

リアリティの伴わないフワフワした読後感?がたまらなく好き。
MK

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