ルビッチ・タッチにちょっとつながる? スタイリッシュで嬉しい。たまに気まずい。
───具体的には、ヴァルモンとマリアンヌが真っ黒く溶け合ってみせる新年初キスとか、美男美女の豪華な多さとか、とても良品。でも、ヴァルモンにソファー上で乗っかられたセシルの首と美脚だけが現れてる技スゴのシーンは、4秒ぐらいでさりげなく終わってくれれば最高だったのに、合計10秒近くしつこく大見得切りみたく映してた。そういうふうに、キメすぎが時々あざとかった。
ジャズは、期待したほどには鳴り響かなかったな。『死刑台のエレベーター』ぐらいにド派手でもよかったのに。終盤のバーのところでドラマー役がちょっと挙動不審な叩き方だった。
主要俳優さんたちについては、、、、
主役二人──インモラルな夫妻役を演じたヴァルモンのファンファンもジュリエットのジャンヌ・モローも、“ドラマを形成していく能力”には長けるが、“人物のリアリティーを出す能力”には乏しかったかもね。
本作の非現実な男女を演じる時、「こんな男女、いるわけない」と私たちを不必要にくつろがせちゃうか、「ひょっとしたらいるかもしれない」とクギヅケにさせるかは、やっぱり彼らのより一層の頑張りにかかってたのに、二人とも「ァハハ。我ながらこりゃひどい男だ」「あたしも悪い女」とばかりに嘘っぽさを鎧(よろ)ってた。いわば、“お芝居”型の人たち。
癖のある顔立ちのモローが元々あまり好きじゃない私は、そういうわけで序盤でもう「モローさんじゃなく自然派のベベ(ブリジッド・バルドー)を主役にしてほしかった……」とぼやきたくなった。そしたら、そのベベみたいな雰囲気のマリアンヌ役アネット・ヴァディムの鮮烈な登場(於スキー場)にトキめいた!
その最初の笑顔につられて私も声出しそうなぐらいにニカニカしちゃった。このアネットの演技が、声も仕草も全部“リアル”型なんだ。完璧ではないけどね。比べちゃって、主演二人へのわが不満があらためて募った。難役の度合いが違うんではあるけどね。
もう一人の重要な助演者・セシル役のジャンヌ・ヴァレリーの演技は、中間型かな。その場その場の対決者(ファンファン、そしてモロー)に引きずられやすい半端な演技がもったいない気もした。美貌度からしてもアネットよりは印象薄かったが、役柄上はそれもしかたない。
そうそう、ラストの“衝撃の”ジャンヌ・モローの顔だけど、シナリオの言葉に反して私は「全編通してこのシーンの彼女が一番カワイイ! まるで内面から綺麗!」と感動しちゃった。特殊メイクが足りないおかげで? カラーだったら辛いけど。(目がとても綺麗な女優さんだ。。)