ちろる

危険な関係のちろるのレビュー・感想・評価

危険な関係(1959年製作の映画)
3.9
退廃的でスキャンダラスな痴情の縺れが印象的なラクロの描く小説「危険な関係」。
1988年のミシェル・ファイファー、現代版で映像化した1999年版、そしてチャン・ツィー主演の中国版そのどれも結構好きなので、恥を忍んで言えば、わたしはこのラクロの描くドロドロ多角関係が好きみたい。
ちなみにこの作品はその原作を初めての映画化した1959年版なのだけど、この後に映像化されたどのものよりもスタイリッシュ。
しかしあまりの不道徳さに当時フランスでは上映禁止&輸出禁止にもなったらしい・・・

兎にも角にもジェラール・フィリップ&ジャンヌ・モローの美しさとは反比例する、醜い所業があからさまで強烈に引き込まれる。
小悪魔な印象が強いジャンヌ・モローですが、こちらの作品では余裕の微笑みから徐々に「おまえらが幸せになるなんて絶対許さない!」と言わんばかりに嫉妬の念に駆られていく彼女の演技は素晴らしく、これもジャンヌにとっての隠れた代表作なのかもしれません。
この4Kデジタルリマスター版が登場したお陰でモノクロの映像の陰影や炎やランプの灯りの表現がかなり生々しく、やがて衝撃的なシーンに続いていく。
ゲームを仕掛ける2人が夫婦という設定にした部分においては、この作品独特のエロティックさを欠いているようにも感じるが、夫婦共に高みから他人を見下し恋愛ゲームする胸糞悪さがあるからこそ
互いに自らのかけた罠に堕ちていく後半は一層痛快に観ることができたのかもしれない。

50年代のパリらしい粋なJAZZの演奏がパリの社交界の雰囲気のおしゃれさと、淑女マリアンヌを演じたアネット・ヴァディムがこのドロドロ愛憎劇の汚れを浄化してくれているようです。
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