黒の試走車(テストカー)の作品情報・感想・評価

黒の試走車(テストカー)1962年製作の映画)

製作国:

上映時間:95分

ジャンル:

3.9

「黒の試走車(テストカー)」に投稿された感想・評価

車の横っちょが映されたかと思えば、すぐに正面、後ろを映し、それから引きのカットになり車が二台山道を走っているのがわかる。あたりキョロキョロと伺い、尾行車がいないか調べると無線で指示を出し、テストカーは走り出す。すると、近くに潜んでいたカメラマンがレンズを向け、車が勢いよくこけ、丘の下へ。黒々とした車に灰色の焔が揺れる、黒のテストカーの始まりだ。
このサスペンスフルな場面を、増村の映画とは思えないほど、カメラの切り替わりが早く演出していて息を飲み、それは会議室の場面に入ろうと持続していく。
画面はハイコントラストで、ほとんど人物の顔とどぶネズミの色のようなスーツが浮かび上がっている。陸軍中野学校では毒入りの黒々としたワインを愛人に飲ませるというシーンがあったが、本作では真っ白な壁のトイレから敵の商社の会議を双眼鏡で覗く場面があって、すごぶる映画的だった。
また、女が白い枕に灰色の口紅で、X=8と書いてから、男を拒絶して、指輪にキスして、それを素っ気なく投げる身振りが優れて面白い。
メガネがギラギラと暗闇の中で光るアイデアは楽しい。読唇術の女とか、スパイの男とか、車をわざと機関車にぶつけて騒ぎ立てる男、デザイン部門の専務(こいつが料亭の階段を登るところを真俯瞰から撮るのがいい、後ろの電話帳が揺れてるのも)とか。
ラストの方の海の場面、なにがあったかはわからないが、あえて波打ちぎわだけをとって、海を決して見せてなかったのが不思議だった。ここで女を寝転がせているが、菅井一郎を誘うときもこの動作をさせている。増村の映画ではよく人が寝転がるので
増村映画にしては、主人公が善悪の彼岸へと到達せず、あくまでも道徳上の理由からスパイをやめ、恋人と歩き、どこかのファミリーの乗った自社の車に轢かれかけ、「綺麗な車ね」、「いや、汚い車さ」と終わってしまう。
この女にスパイをしろというときに、木漏れ日が揺れて不穏な影を作ったり、後ろでメリーゴーランドが回ってたり、ブランコに乗ったりというのはそれにしても忙しない公園だ。
船越英二やスパイの女、菅井一郎を騙しに行ったスパイ、みんな目を合わさない。見つめることを回避している。
乾杯!カチン!とやるとこがまたでた
R

Rの感想・評価

4.5
増村保造のスパイ物かなり好きかもしれません。本作はスパイと言っても産業スパイ。タイガー自動車会社が新たに開発したパイオニアという名のスポーツカーが、試走中に事故を起こし炎上。それを新聞にすっぱ抜かれるのだが、テスト走行自体してるのを知っていたのは幹部たちのみ。おかしいぞ。幹部たちの中にスパイがいるに違いない。あぶり出さねば。だが、社長の身内が多いので追求するの困難。なので、逆にライバルのヤマト自動車にタイガー社のスパイを送って、こっちのニセ情報を提供して騙そうとしたり、相手側の新型車の情報をゲットしたりしようとする。ってな感じで、二社のスパイ合戦を展開しながら、いったい自社幹部の誰がスパイなのか?というミステリーを同時に進行させる。まず、パッと見ておっ、好み!って思うのが、かなりどぎつい白黒のコントラスト! ダークな画面の中に高度経済成長期のギラギラした男たちの顔がくっきり刻印されてて、その顔、顔、顔がすごいインパクト! 中でも主人公の朝比奈を演じる田宮二郎のイケメンぷりが印象的で、横顔や斜め上からの角度が惚れ惚れするかっこよさ。鼻の形が良い。スパイ活動のためなら自分の彼女に色仕掛けまでさせてしまえる男なのだが、筋肉質でキレイな上半身裸を見ると、まぁこりゃ惚れるよね、昭和とは、惚れた男に女がどこまでも弱かった時代なんだろうな、と思った。めっちゃ性格キツそうで無愛想な叶順子の不貞腐れた表情も素晴らしい! 部長の小野田を演じる高松秀郎がこれまたものすごい眉と顔面力! 濃さがすごい。エグい。この人自身が企画した新車なので、そのセールスのためならどんなことだってやってやるぞ、っていう勢いがすごいな、とエゲツなさも含めてアグレッシブさに感動。会社=人生の場、っていう感覚が、令和の現代には想像できない強度で存在してて、いま見ると、良し悪しは別にして、純粋にすごいな、と。この勢いが日本以外の国ではいまでも普通にあるって考えると、そりゃ日本もぐんぐん抜かれていくわな。とか今だからこそいろいろ考えさせられる面も多い。増村作品にしては元気にカメラが動き回ってるのも喜ばしいし、全体的に印象的なシーンが多く、読唇術の先生がビデオ見ながら解読していくとことか、叶順子がスパイ後に朝比奈のうちに報告に行くとこ、枕に口紅とか、素晴らしいです。そして、後ろめたさという大変に人間臭い感情がキーになってるのもドラマとして面白い。それがピークを迎えるクライマックスは……キャスティングの派手さ的に若干ネタバレしてもーてるよな、とか、最後の最後までもうちょいとスリリングだったらな、とか、まぁあるっちゃあるが、日本人的な倫理感のよい側面をさらっと謳った、ステキなエンディングだと思いました。3部作らしいので残りも楽しみでございます。ちなみに増村作品これで8本目でした! どれも面白い!
渋いショットの数々にしびれる
ラストの唐突さ(というかスピード感)が好き
nagaoshan

nagaoshanの感想・評価

3.8
増村保造監督作品!

増村保造の作品特集⑩

『巨人と玩具』でも描かれた社会派の異色作品!

今回ほ自動車🚗🚘会社同士の産業スパイ合戦‼️

新作スポーツカーの開発から発売までに至るまでを愛と野望と裏切りを先の読めない展開をラストまで一気に畳み掛けていく物語。
若い田宮二郎もカッコよかですがイケイケ上司の高松英郎と船越英二の飄々とした演技もなかなか良かった。

ハリウッドが得意とする題材だけど増村監督は60年代に作っているんですよね〜
何度も言うけど、すげーよ!増村監督!(^^)

良か映画!
巨人と玩具の川口は上司高松を見捨てられず、長谷川に支えられて仕事を続ける、田宮は上司高松と訣別し、叶と新たな道を探る。上田と長谷川が船越を美人局してたとか菅井がしたたか割には叶にあっさり落とされるとか。
t

tの感想・評価

4.0
田宮二郎というより高松英郎のサイコぶりが目立つ。あらゆる手段を用いて競合を出し抜こうとする高度成長期ロマンな悪行の連続が楽しい。決め手は金と女のいずれか。ふてぶてしい叶順子が最高。「相談」を持ちかけられた時のブランコ、口紅メッセージ、指輪へのキス…
呑芙庵

呑芙庵の感想・評価

4.3
タイトル回収が気持ちいい

戦後経済成長の中で実質関東軍とのたたかいが闇落ちになる話

OPクレジットの出方がなんとなく何がジェーンに起こったかに似ているような気がするけど気のせいかも

バーでのローな構え、好き

デザイン課長をシメる俯瞰ショット、笑っていいんすかね
面白かったがそこまで熱狂しなかった記憶がある。
企業スパイもの。「巨人と玩具」のようなダークさを期待したものの、ぬるめのオチに少しがっかりした。
敵会社の重役が鈴木清順的立地に夢のマイホーム建てているの謎。
田宮二郎推したくて観たのだが、別に田宮二郎推せる映画では無かった。
chacole

chacoleの感想・評価

4.2
今とは隔世の感ありって映画なんだろうな…という先入観をいい意味で破られました。
「企業の情報漏えい」という概念は、当時理解されていたのか興味尽きません。
産業スパイの小道具などもアナログながら、今のサスペンスものと使い方はほぼ同じですし、登場人物のキャラもしっかりしてます。
田宮二郎が主役でしょうが、高松英郎の怪演とクライマックスの船越英二が全部持ってっちゃいました(笑)。
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