きみどり

美しき結婚のきみどりのレビュー・感想・評価

美しき結婚(1981年製作の映画)
4.5
名作再訪。

仕事も男もどん詰まりな女子が、結婚で一発逆転を狙ったら…。
ってこれドラマに漫画に掃いて捨てるほどあるネタですが、元祖フレンチ意地悪おじさんが料理すると、若い娘にビタイチ容赦ないお話になりました。

それを言っちゃあお終いよ、な本音をゲロゲーロと吐きながらサビーヌが通った後にはぺんぺん草も生えやしない。なにせ実母も彼女を持て余している感ありあり。
しかし何よりおっかないのは、肚の底でサビーヌをコケにしているであろうクラリスだと思う。これは監督の分身なのか、はたまた私たち観客の分身なのか。

あるいは、フロベールが「ボヴァリー夫人はわたし自身だ」と言ったみたいに、サビーヌこそがロメールの分身でもあるのかも。

サビーヌの自己認識の歪みを見て笑うなら、その嘲笑はそのまんま自分にブーメランしてくる。韓流ドラマも顔負けの白昼夢に耽ったことのない人はいないだろう。いないはず。…え、いないよね、違うの?

とりあえず私は、サビーヌの言動にいちいち共感性羞恥(←覚えたてなんで事あるごとに使いたい言葉)をかき立てられてしまい、ちょっと辛かったです。
でも辛いより面白いの方が上回る。

あと、むかし観たときに、電子音楽の劇伴に違和感あったのだけど、あれ狙ってやってるんですね。ロメールの意地悪! 冒頭からあの陳腐な音のせいで、一気に不穏が漂ってるじゃないですか。

*****

関係ないけども『フランシス・ハ』はこの映画の流れをくんだ作品だったんだなと思った。
ただしグレタ ・ガーヴィグの脚本は彼女自身に甘々なので、ロメールの意地悪にはとうてい及ばないなあ。
きみどり

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