カツマ

イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男のカツマのレビュー・感想・評価

3.4
死を引き寄せる政治家ジュリオ・アンドレオッティの波乱の人生を最もドス黒かった時代を中心に映画化。能面のような表情のアンドレオッティの口から溢れる詩情な言葉はパオロ・ソレンティーノの為せる技か。ほぼ2時間無表情を貫いたトニ・セルヴィッロが魂を吹き込む鋼鉄の名演で圧倒する。

7代にわたり首相を歴任した政界の重鎮アンドレオッティ。彼に関係した人間はことごとく命を落とし、また裏ではマフィアとの癒着も噂される、正に完全なるブラック。そんな彼の心を読み取れるものなどいなかった。派閥は解体し、裁判にかけられても、彼の心が揺らぐことは無かった。彼は魔王と呼ばれるに相応しい、政界の最深部として君臨し続ける。

音楽とダンスを駆使したソレンティーノの世界観は今作でも貫かれ、そこにバイオレンスなショッキング描写を加味し、画面に不穏な空気を漂わせる。ローマという街は暗黒と化し、先の見えない未来は予感できない。果てしない政治の闇を克明に描き出した作品。
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