たぶん多くの人が漠然と抱えているような不安を
安部公房という作家は明確に文章化できて
しかもそれが読み手にはとても気まずくて
後ろめたい気持ちになるような表現で
わかるようでわからない、
でもわかる・・・みたいな
気持ちになるんだけど(私の頭が悪い)
巷にあふれている<自分探し>とは
格段の違いを見せてくる
「自分とは」「自己の存在意義」
といったものをこんな形で
バシバシ突きつけてこられると
すごく、すごく心臓に悪い。
監督は草月流御曹司の勅使河原宏。
音楽は武満徹、原作・脚本が安部公房ときて
こんな前衛的かつ芸術的な作品は
今後生まれないだろうと思います。
オープニングからその片鱗がすごいんだけど
この作品のいちばんの凄さはちゃんと
娯楽作品として完成されていること。
ゲイジュツカにありがちな
ひとりよがりではなく単純に面白い。
そして何よりキャスティングで
「砂の女」である岸田今日子の演技。
ヒョオオおおおおおっとなります。
「砂」の恐ろしさ、美しさは
原作のイメージそのままでした。