砂の女の作品情報・感想・評価

砂の女1964年製作の映画)

製作国:

上映時間:147分

ジャンル:

4.1

「砂の女」に投稿された感想・評価

Jaya

Jayaの感想・評価

4.9

このレビューはネタバレを含みます

とにかく岸田今日子が凄まじかったです。彼女でなければ成り立たない映画だと思わせられます。岡田英次は雰囲気出てましたが、正直下手です。

モノクロでなければならなかった映画だとも思わされました。「砂」に色味が付いていたら、果たしてこれほどの象徴性が出せていたのか。
どうやって撮ったのか、砂の描写も見事でした。原作からするとセット撮影でいくらでも陳腐になりかねないと思いますが、効果的な挿入カットもあってか、かなりのリアリティーが出ていました。前半部での脱出不能感を出す技量は途轍もないと思いました。
そして音楽も素晴らしい。流石としか言えません。
クライマックスとも言える「あれやってみろ」のシーン、音楽とカットに心から痺れました。

徐々に諦観と適応の度を増していく主人公、これという転換的なシーンはほぼないはずなのに、とても自然な帰結のように見えました。やはりカットの入れ方が上手いからかなとは感じました。
急いで逃げる必要はない、と漏らすまでの心の変容を見事に描き出していたと思います。

原作に比して当然カットしているシーンも多く、結果として主題も微妙にずれてはいます。が、映画によってしかできないことをやり遂げ、原作から離れてそれを見事に映画として昇華させ、独自の視点を提供することに成功している、稀有な傑作だと思いました。
M

Mの感想・評価

-
欲望 欲求 有限 自由 希望 水面 自己 虫 仮面 烏 色 罪 

砂は水に似ている 海と砂漠、相反するものに共鳴する美がある 絶対掴めないもの
でも、やはりそこには、狂気と死の匂いが溶け込んでいるのだとも感じた

人間からふつふつと湧き出る汗の画に魅了されたのは、本当に感服だった
一

一の感想・評価

3.3
前衛映画の巨匠 勅使河原宏監督作品
安部公房の同名小説を作者自ら脚本を務める

昆虫採集に来た中学教師が、砂の穴の中にある未亡人の家に宿泊することから奇妙な幽閉生活が始まる

タイトルバックのハンコによるスタッフ・キャストの演出から始まり、今観ても全然古くさく感じない深めのテーマで、寧ろかなりタイムリーな作品かと

SF風味なストーリーで、リアリティーに欠けるシュールで不条理な設定でも、生々しい描写を美しいモノクロ映像で映し出すことで妙にリアルに感じてしまう

最初から最後までなんと言葉で表現すればいいのかわからない独特な雰囲気
砂はもちろんのこと、美しい水を効果的に使う巧さなんかはタルコフスキーを彷彿とさせる

前衛的な芸術作品でありながら、サスペンス色も強い
その上最終的には哲学のような提示すらある
自由は求める癖にそれを与えられると無下にし、結局適応してしまうという人間の恐ろしさ

すべてが幻想なのでは?もしかしたらこれはフィクションではなく、今もなお起こり続けている日常と解釈するとゾッとする…

時代を感じられる不安を煽る音楽や、砂にまみれた岸田今日子の妖艶なエロティシズムは目を見張るものがありました
これに関しては間違いなく岸田今日子なしではあり得ない作品でしょうね

ただ正直、映画史に残るレベルで軒並み超高評価されてるというポイントはさっぱり理解出来ていない
原作を読めば少しはわかるのかな
とりあえず『他人の顔』も観てみよう…

〈 Rotten Tomatoes 🍅100% 🍿93% 〉
〈 IMDb 8.5 / Metascore - / Letterboxd 4.4 〉

2020 自宅鑑賞 No.473
Leyla

Leylaの感想・評価

4.0
安部公房の世界観を実写で表現出来るなんて初めて観た時は衝撃的でした。
岸田今日子が妖艶でハマリ役。
モノクロームの力を感じた作品です。
BON

BONの感想・評価

4.5
オープニングクレジットから素晴らしく芸術的。これからの不穏を象徴するかのような集団で押印されたハンコ、それらから漂う集落の悪習やヒエラルキー、楽譜のような英字での製作陣・キャスト紹介。音楽。カッコ良すぎた。

原作は安部公房の傑作の1つとされる小説、製作は市川喜一・大野忠、撮影は瀬川浩、音楽は武満徹、美術は平川透徹。国内外から高い評価を得て、あらゆる賞を受賞しています。ここに書き込むと長ったらしくなるで省略。

ストーリーは、砂丘に昆虫採集にやって来た男が、女が1人住む砂に囲まれた家屋に閉じ込められ、様々な手段で集落から脱走を図る話。初めは不便な環境に憤り、そのうち外部から助けが来ると待ち望んでいた男。

やがて女との生活に馴染み、砂掻きや物資配給制の砂の生活に順応していく姿が恐ろしい。「逃げる手立てはまたその翌日にでも考えればいい。」闘う意思があるように見せかけてもう今の環境に甘んじている。言いようのない気持ち悪さを感じたのは同族嫌悪か何なのか…。

女という砂に絡まれ、男が抜け出せなくなる姿はまさに蟻地獄。
「でも、東京の女の人はみんな綺麗なんでしょう?」とうセリフがあり、おそらく都会ではなんてことない女が、砂にまみれた排他的な空間では美しくなるんだな。
それにしては岸田今日子の砂にまみれた姿には妖艶さがあり、美しかった。岡田英次と岸田今日子の無音の絡まり合い。忘れることはないと思う。

水の流れのような風紋、時に牙を剥いて襲う砂の怪物、幾何学的で神秘的な砂。払っても払ってもまとわりつく砂。
安部公房原作の「砂の女」は読んだことがあるが、原作の頭で描いていたイメージがそのまま写実化されたような圧倒的な映像美だった。
本作の撮影地は静岡県の浜岡砂丘で、「ツィゴイネルワイゼン」の撮影地もここだそうです。行きたい。

ストックホルム症候群のような、吊り橋効果のような、人間の順応力のような、人の気持ちを利用した恐ろしく飲み込まれるような映画でオールタイムベストの殿堂入り。
映像化でこんなに感動したの初めてでした。小説読んでからの方がありがたみをフルに感じれるかと思います。
面白すぎる。小説読んでても面白い。
良作です。
安部公房原作作品。
随所に挿し込まれる、砂の表情。
ひび割れ崩れ、流れ吹かれ降りかかる砂、砂、砂。
その中で生きる女と、共に暮らす事になる男の物語です。

岸田今日子演じる女の蟻地獄の様な暗い情念が、本作を単なる脱出劇とは一線を画す効果を上げています。
また昭和初期の田舎に有りそうな、下卑た村人達の煽り、画一的な『村>人』といった価値観が随所に見られ、先述の演出と相まって主人公の絶望感を深く見る者に訴えます。
まさに進むに砂の壁、返すにも女の情念。
汗ばんだ女の肌に纒わり付く砂が、とてもフェティッシュです。

住めば都、生きる意義の探求等作品のテーマは読み取れますが、何より進退窮まった閉塞感に胸が苦しくなる作品でした。
ずーーっと不思議な感覚

慣れと諦めって似てるのかなってふと思った…
穴を覗くと、そこには人の心の闇が見える。これは実に「羅生門」的であるが、砂の湿り気が、終始アーチスチックでエロチックな雰囲気を醸し出している。人間蟻地獄とでも言えるようなこの装置は、決してただの穴なだけではなく、様々なメタファーとして機能している。都市部と地方の格差、男と女の格差など、視覚的な高低差はずっしりと聳え立っている。「砂がなくなっちゃあ、誰も私のことなんか構っちゃくれないのさ」というセリフだけでも十分に示唆するものがあるが、とにかくモノクロによる喚起が凄い。本作は60年代を代表する邦画作品の一つであろう、素晴らしかった。
>|