留

風と共に去りぬの留のレビュー・感想・評価

風と共に去りぬ(1939年製作の映画)
3.6
正直言って4時間も付き合うのはごめんだと、一緒に観るのは敬遠していたが、見始めれば面白く見ていられる。
休憩時に息子が「これって《カーネーション》みたいだね」と言ったが、一面の真理だ。
小原(オハラ)糸子も、もう一人のスカーレット・オハラなのだ。スカーレットも糸子も強い人間である。環境に揉まれて強くなった。そういう女の生き方を描いたドラマとしては上出来だけど、NHK連続TV小説「カーネーション」は90点級。ハリウッドを代表する「風と共に去りぬ」はせいぜい60点級だな。
●制作年を考えるとしょうがないけど、音楽が実に陳腐。訳のわからん伴奏音楽がずーっと流れている。音楽が鳴ってないと不安でしょうがない日本の糞ドラマ糞映画のレベル。
ただ《タラのテーマ》は丁寧に使われていて乱用されない。
●黒人の描き方も類型的だ。特に雨の中、傘をさし手斧を握りしめて鶏を追い回す下男描写。プリシーもマミーもすごく人間的に描かれてるしユーモラスではあるが、黒人下女のステレオタイプを脱し切れていない。
●つまり南北戦争観、奴隷制観が今の視点では徹底的に非人間的=白人至上的なのだ。奴隷制の上に成り立っていた南部のエセ貴族社会を懐かしみ恋しがるというマーガレット・ミッチェルの史観のレベルを超えることができない。

それでも映画として忘れられないシーンがいくつもある。
*メラニーの出産でスカーレットは医者を探しにアトランタ駅にやって来る。カメラがずんずん上がり後ろに引いていく。駅構内線路にまで傷病兵が累々と横たわっている。
*アトランタ脱出時、兵器庫大爆発の傍をすり抜けるレットの馬車。スカーレット、出産直後のメラニーと赤ちゃん、役立たずのプリシーを乗せて。
紅に染まるレットとスカーレットの別れのキス。
*タラに着いてひねた大根をかじり、2度と飢えないと決意する。
*1人で家族の面倒を見始めるスカーレット。ためらいもなく北軍脱走兵を撃ち殺す。メラニーも同じように考えていた、というのがいい。

後半の復興はスカーレットの破茶滅茶ぶりが痛快。とにかくタラを守るために生きてる。レットに税金300$出させようと深緑のカーテンでゴージャスなドレスを作って誑かしに行く。(「サウンド・オブ・ミュージック」はこれの影響?)
レットに断られ妹スエレンの婚約者フランクを強奪する。この時のマミーの顔がいい。
フランクが死にレットと3度目の結婚、ボニーの誕生→事故死以降は見てるのが辛い。
ラストシーンは毎回、「それでも希望を持とう!」というふうに見てきたし今回もそうだが、結局これって単なるメロドラマでしかないよな、と思う。
留