矢吹

ライトスタッフの矢吹のレビュー・感想・評価

ライトスタッフ(1983年製作の映画)
4.2
インタビューでは、言えなかったけど、おれたちは最高のパイロットを知っている。彼こそが正しい資質を持つ男。ベタベタの作りやけど最高のシーン。今日もどこかで彼らはマシーンの限界に挑んでる。知名度ではないんだよ。あの男だ。命をかけて挑んでる。挑まないのが最大の失敗であり、彼らにとっては死と同じ。手垢にまみれているようではありますが、個人的には生きている上では忘れてしまいがちなテーマです。不朽です。

193分(ツタヤ曰く)と長い作品ですが、その分ストーリーも重みもしっかりあります。このレビューとは違って、冗長なのではありません。

限界に挑む男の話ではありますが、これはその妻たちの話でもあります。夫婦は運命共同体。
命をかけて生きて帰ってくる。
力の限界に挑戦する男の魅力と四回に一度は帰ってこないかもしれない夫と生きる妻。そういう形の夫婦。

大筋は色んな男たちの戦い。猿でもできる仕事の駒に使われない。男のプライド。権威との戦い。そして男は自分の力で帰還する。英雄の誕生。あるいは妻のため。世間は宇宙競争で躍起でも、注目されないところでだって、プライドで飛ぶ。
このへんでメディアのおかしみというか、作られた英雄の話が出てきたりもして、またそれも面白い。

「飛行機はお金が飛ばす、お金はヒーローが作る」

空で世界一速かった男は宇宙に何をみるのか。
命をかけて任務を遂行する男は偉大。結局は同じ志。
音の壁は見えない恐怖、悪魔との戦い。そして、象徴としての音の壁は誰の人生にもたくさんあるな。だから、この作品は男とか女とかじゃなくて生き方としての話といってもよいのかな。

主役という主役はいなくて、焦点の当たる人物が多くて、いつ死ぬかわからんから、なかなかヒヤヒヤする。臨場感が半端ない。これは冒頭一発目で事故を描いたプロットの勝利ですね。だいたい史実に基づいてるっぽいので分かる人にはわかるのかもですが。

そして彼は世界最高のパイロットになった。
恐れを乗り越えて前人未到を走り続けることが正しい資質で、あの男の見せてくれてものならば、彼もそれを成し遂げた。
せこい作り方、かっこいいに決まってる。大空をかけるロケットにかっこいい音楽。エンドロール。
未知の世界と限界に向き合う息遣いのかっこよさ。要所要所の音楽もなんですけどね。これぞって感じのアメリカンな音楽。こればっかりは聞いてもらわないと陳腐になるけど、壮大で最高。

結局は「過去の栄光にしがみつき僻みをいう男にはなるな」みたいなセリフに集約されてた。
マッハ1、2、宇宙。
その先にある景色は最高に綺麗。遮るものは何もない星宙と満月。その時々の人間の限界へ向かう。
人類が到達した宇宙からの景色は必見。
もちろん彼らは再びその先を目指す
矢吹

矢吹