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ジョンQ 最後の決断のモールスのレビュー・感想・評価

ジョンQ 最後の決断(2002年製作の映画)
4.0
賛否分かれる作品でしたね。主人公ジョンを演じたデンゼル・ワシントンですが、社会風刺の映画には欠かせない存在感がありますね。本作では病院で立て籠る犯罪者となりますが、良い人というのが滲み出てます。はまり役と言えるでしょう。

息子の余命宣告を受けて、助かる手段は心臓移植しかないことをジョンは知ります。そこには大きな壁が…。そう多額の医療費が必要になってくるのです。追い詰められたジョンが選んだ行動とは?病院に立て籠り、医者に強制的に心臓移植をさせることでありました。ストーリーはそんな感じです。

本作のような心臓移植の手術なら、保険の適用はどこの国でも難しいと思います。とは言え、アメリカでは医療保険にかかる費用も高額で庶民が加入するのにハードルが高いのです。そのため、風邪を引いても病院に行けない人が多いのです。国民保険制度がある日本は、その点では恵まれてます。
アメリカは金持ちのための国であり、医療でも金持ちしか恩恵を受けることしか出来てません。まぁ、ブルーカラー層には支持される映画だとは思いますよ。

この親子に起こった事柄は悲劇以外の何者でもありません。社会的弱者は切り捨てられるもので、彼らはその犠牲者です。それでもジョンが病院に立て籠ることには非難の声はあるでしょう。では、現実はどうでしょうか?日本でも介護疲れによる親子心中、親の収入による子供の医療格差など泣き寝入りした人の声なき声があるはずです。立て籠りを肯定するのではなく、声を上げることが大切であると受け取りたいですね。
そして自分の心臓を息子に移植させようとジョンが自殺しようとしたシーンですが、これだって映画の中だけの話ではないはずです。ドナーを見つけることの難しさを痛烈に描写してると思いますよ。他人事にならない時が誰かに訪れるかもしれません。

あと脇役陣が良かったですよ。ジェームズ・ウッズはエリート医師としての冷たさの感じる振る舞い。レイ・リオッタの軽~い感じの刑事役。アン・ヘッシュは経営優先のビジネスライクな院長は、本作のキープレイヤーでしたね。そしてジョンと交渉した警部補ロバート・デュバルの人柄の良さそうな演出が主人公を引き立ててました。
粗さもある作品ですが、良い社会派映画だと思います。
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