映画漬廃人伊波興一

カミュなんて知らないの映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

カミュなんて知らない(2005年製作の映画)
4.3
約10年周期で記憶の殻を唐突に突き破り改めてその異様な存在で私たちを狼狽させてくれます。
柳町光男『カミュなんて知らない』

やはり日本映画は面白い!
こんな作品が脈打っているのですから。
しかもそれがさほど遠い昔の映画などではない事に私たちは率直に感激致します。
万田邦敏『接吻』青山真治『helpless』大森立嗣『ゲルマニウムの夜』と共に柳町光男の『カミュなんて知らない』は一度でも観てしまえば約10年周期で唐突に記憶の殻を突き破る(戸惑わせ映画)として刻印されるに違いありません。
この作品の素晴らしさは演出や音楽、役者たちのレベル云々よりも(気配)そのものが徹底して孤立しているという点に尽きます。
初めて観た時にはその(気配)の神出鬼没さ故か,まるで特殊詐欺の被害にでもあったかのような不安にさえ駆られます。
封切られた直後、これだけ個性的な作品でありながら誰も言及してこなかった理由が今になって分かります。
詐欺被害にあった相談なんて易々と持ち出す者などいないのですからw
騙されたのではなく、実は愕かされていた、と気づいたら公開から10年が経過しておりました。