シズヲ

周遊する蒸気船のシズヲのレビュー・感想・評価

周遊する蒸気船(1935年製作の映画)
3.5
前半も楽しいものの「そんなにかなぁ」という思いがあったけど(ウィル・ロジャースもアン・シャーリーも良いけどね)、レース始まってからの流れに脱帽。アクションによる活劇性がそのまま“甥っ子の死刑阻止”という大筋へとシームレスに組み込まれる。序盤から続く蒸気船のダイナミックな撮影にも充実感があるけど、ニュー・モーゼ再登場からの怒涛ぶりが特に面白い。投げ縄捕獲からの水中引きずり回しでめちゃめちゃ笑った。「そもそもニュー・モーゼってなんやねん」という映画序盤から続く疑問すらも跳ね除ける勢いがある。

ニュー・モーゼ、悪魔の酒、蝋人形など、序盤〜中盤にかけて登場した要素がまさに“物語へと焚べられる薪”として船も映画も加速させる。それらの燃焼が画面上で文字通り“運動”として繰り広げられる様には半ば感動的なカタルシスがある。ドタバタと突っ走った勢いのまま突入するラストも、サイレント映画じみたシュールなハイテンポぶりで楽しい。手際が良すぎるオチの付け方もあまりに潔い。
シズヲ

シズヲ