夢子夢男

周遊する蒸気船の夢子夢男のレビュー・感想・評価

周遊する蒸気船(1935年製作の映画)
5.0
ジョン・フォードの作品のなかでもぶっちぎりで大好き。


無実の甥っ子デュークを絞首刑から救うべく、蒸気船の船長ドクとデュークの恋人フリーティは証人を見つけるため蒸気船を浮かぶ蝋人形館に改造して金を稼ぎながらミシシッピー河を奔走する。
刑が執行されるバトンルージュまでの蒸気船レースに参加し証人を連れてデュークの無実を見事晴らすことができるのか、というお話。


美しいロケーションのなか繰り広げられるこの超絶抱腹絶倒のスラップスティックな物語は81分という素晴らしいランタイムで、省略する美学が貫かれ、有機的に働く愛らしいキャラクターたちがいて、船と生命をかけた熱いレースと古き良きアメリカの姿があり、尚且つラストにはその古き良き「アメリカ」の歴史を燃やして「男女のロマンス」という小さなひとつの未来へと繋げてみせる、怒涛の破壊と構築による笑いとペーソス溢れる超一級の娯楽作品となっている。


オンボロの蒸気船の愉快な仲間たちは、
老いぼれに、沼地から出たことのない娘、アル中、あたまのネジが抜けてる黒人(あと蝋人形となった偉人たちと証人であり、いちばん爆笑をかっさらっていく宣教師ニュー・モーゼ)等、船と同じくみんな少しオンボロ。
でも彼等のまわりにはいつだって人間同士の涙出るくらいにやさしい繋がりがある。
すごい生き生きしてる。

そして何よりこの映画の個人的にいちばんの魅力は、ボロボロになった使い古しのテーブルクロスをスカートにしていた小汚い小娘が、ラストの火を噴いて爆走する蒸気船の如くどんどん加速するように綺麗になっていくフリーティー役のアン・シャリーのキュートさだ。
ウィル・ロジャースとふたりで帽子をちょこっと斜めにかぶり舵を取るその姿はもう素晴らしすぎる。