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男はつらいよ 柴又慕情のbluetokyoのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 柴又慕情(1972年製作の映画)
3.5
そろそろ、マンネリの巡航路線が始められそうだ、シリーズ化も長く続きそうだぞ、と手ごたえを感じ始めたころだろうか。こうなると、ストーリーはワンパターン化され、ヒロインというパーツを入れ替えていくだけとなる。
ただ、当時としては人気女優が出演して面白いのだろうけど、いま見て、それが面白いのかどうか、ということである。
今回は、吉永小百合さんだ。当時から、押しも押されもしない大人気女優である。

今回から夢シーンから始まるようになる。貧困にあえぐ夫婦(さくらと博)が、借金取りから責められる。そこへ、木枯し紋次郎風の寅さん、登場。札束で見事に解決するのだ、という夢。

とらやの店先に貸間有りの札が下がっている。
さくら、博が一軒家を建てるので、少しでも資金援助をしようとして、おいちゃん、おばちゃんが寅さんの部屋を賃貸しようというわけである。
寅さん、これ見て、怒りゃしないかね。いつ帰って来るかもわからないからいいよ。
などと言っているときに限って、寅さんは帰って来るのだ。

案の定、というか、予想通り、寅さんが帰ってきた。怒った寅さん、騒動を起こして、去って行く。

寅さん、不動産屋巡り。なかなか、いいところがない。やっと、こんなもんでいいかなという物件。不動産屋が案内してくれる。
車の中で寅さんは寝てしまう。車から降りた寅さん、汚いけど、なかなかいいじゃないかと、ずかずか、店に入っていく。物件は店の二階なのだが。どっかで見たことがあると思ったら、その物件、とらやの二階、寅さんの部屋なのだ。このオチは、すぐに気付くが。

またしても大騒動。今度こそ、寅さんは出て行く。

舞台はいきなり、金沢。女子三人旅。マリ、みどり、歌子。当時は、ディスカバージャパンでこうした旅行が流行っていたのかな。
ただ、旅行も三回目ぐらいで、そろそろ食傷気味になっている。
そこへ、寅さんとの偶然の出会い。なぜか大盛り上がりの旅行になる。

歌子さん、家に帰ると小説家の父親が一人。実は、父親は離婚していて、娘一人になった歌子さんを手放したくないようなのだ。

寅さん、柴又に帰ったはいいが、けんか別れしているので、なんとなくとらやに入りづらい。そのとき、またしても、マリ、みどりと会う。
寅さんの話を聞いて、柴又に遊びに来ていたのだ。

そういうわけで、とらやへ。じゃあ、今度は、歌子さんに知らせようということになる。

寅さんは、歌子さんがお気に入りなので喜ぶ。

後日、本当に歌子さんがとらやに現れる。大いに楽しんで、歌子さんは帰っていく。

二度目は、とらやに泊まる。ただ、これは、楽しいから泊まったのではなくて、父親が一人で暮らせるように、ということで泊ったのだ。

それを察して、さくらと博が自分の家に歌子さんを招いて、事情をきくのだった。

実は、なぜ、こうなるのかというと、前作(第8作)が関係している。ちょっと、見る順番が前後してしまったけど。

第8作で、博の母親が亡くなるのだ。葬式のとき、父親に、博は食ってかかる。母親は女中でしかなかった、という風に。
その母親と歌子さんがダブったわけである。(男はつらいよシリーズは、第1作から順番に見ていった方がいいです。第8作で登場する貴子さんの喫茶店「ローク」もちらっと出てくる)

歌子さんに事情をきくと、愛知県で陶芸をやっている恋人がいるが、父親が歌子さんを手放したくないので、結婚できないということなのだ。

博、こうして、泊まりに来ている、ということは、歌子さんは、もうすでに、行動しているんですよ、などと言って、歌子さんを励ますのだった。

ということで、歌子さんは、単身、愛知の彼のもとへ。結婚するのだった。

最後。江戸川の土手。

さくらさん、歌子さん、よかったわね、夢がかなって。
寅さん、そうだな、よかったな。
さくらさん、じゃあ、なんで、旅に出るの?
寅さん、歌子さんに振られたとは言えない。あんな雲になりてえんだよ、と答える。

さくらさんの切ない顔。

女子三人組のマリさんでもいいけどなあ。でも、やっぱり、歳が15、6歳ぐらい離れているので、無理だろうなあ。そういう意味では、歌子さん推しになるのかなあ。
歌子さんみたいに、やや天然で、寅さんにはなついているが、恋愛の対象ではないし、それ以前に、寅さんの方でラブコールを送っても、まったく、気付かないで、最後まで行ってしまう、というのは、このあと多くなるみたいだ。
そうなれば、女優さんだけ代わればいいだけだし。
ただ、まあ、こういう目立たない役というのも難しいのかも。吉永小百合さんだからできるわけかな。
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