Jimmy

父と暮せばのJimmyのレビュー・感想・評価

父と暮せば(2004年製作の映画)
5.0
この映画を初めて観たのは、映画公開時の2004年8月27日、岩波ホールにて鑑賞。

約11年ぶりに鑑賞したが、やはり大いなる感動😭

この作品は、日本人に対して、ひいては世界中の人に対して、決して風化させてはならない過去を突きつける。
こうした提示は重くなりがちだが、本作は父娘の二人芝居を中心とした軽妙な物語進行とともに、主張すべきメッセージはきっちり述べる。
黒木監督の冴えた手腕と強固な意志を感じる作品となっている。

黒木監督は自身を「戦争が終わるころ十五歳だった『遅れてきた小国民』の世代」と述べており、“戦争レクイエム三部作”を作ってきた。
「TOMORROW/明日」は長崎原爆投下直前の庶民生活を丹念に描いた上での原爆投下の衝撃を描き、「美しい夏キリシマ」では原爆投下場所から少し離れた南九州・霧島地方で生活する人々に襲いかかる戦争の恐ろしさを描いた。
前二作がロケ中心の美しい自然の中で描かれたのとは対照的に、本作は家の中という閉じた空間で、数少ない登場人物を軸とした密度の濃い作品構成となっている。

冒頭で娘が恋したタイミングで、父親が「恋の応援団長」をする。
娘は「死んでしまった人の事を考えると、幸せになってはいけない」との気持ちが強く、恋する気持ちと葛藤する。
この葛藤が、原爆投下3年後の広島で奇跡的に生き残った娘と父のやりとりとなるが、その会話が至妙の域に達している。
この手法(語り口)は見事。

父親が娘の幸せを願う気持ちはいつの時代も不変であると思うが、父親の叫び、未来に向けて幸せを決意する娘、なんと素晴らしい父娘の風景であろうか。

『黒木監督の映像センス』と『監督自身が経験した戦争反対への執念』を感じる作品である。

 

[印象的だったキーワード]…『エプロン劇場』、『おとったん、ありがとありました。』
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