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スパルタカスのTSのレビュー・感想・評価

スパルタカス(1960年製作の映画)
4.2
【共和政ローマにおける危険因子】89点
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監督:スタンリー・キューブリック
製作国:アメリカ
ジャンル:歴史
収録時間:198分
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キューブリックファンの方には怒られるかもしれませんが、今まで見てきたキューブリックの作品の中で一番良かったです。というか良い意味でキューブリックっぽくない作品です。それも全然。でも納得の出来です。もしこの歴史大作にキューブリックの独特の世界観を出してきていたら首を傾げたかもしれません。キューブリック自身は、カーク・ダグラスと何度ももめた結果製作した作品であるため、「失敗作」と言っているようです。僕としては難解で変わっている『2001年 宇宙の旅』や『時計じかけのオレンジ』より数段良かったのですが。。(笑)まあ歴史映画が好きというのも理由の一つでしょうね。

時は共和政ローマ。トラキア人のスパルタカスはローマの属州であるリビアで奴隷として働かされていた。彼は倒れた奴隷を助けるため衛兵に反抗し、飢え死にの刑に処されるのだが。。

世界史でもお馴染みの「スパルタクスの反乱」を描いた大作です。現在ではほとんどがスパルタクスと表記されていますが、今作ではスパルタカスと表記されてます。スパルタカスは、共和政ローマ最強の剣闘士とも言える人物で、果敢にローマと闘います。対立するクラッサスとは、第一回三頭政治においてカエサル、ポンペイウスと肩を並べたあのクラッススの事でして、史実的にもスパルタカスを討ち取ったことで知られています。剣闘士の反乱が起こるということからもわかる通り、当時のローマはかなり不安定でした。ポエニ戦争の結果、属州が増加したことにより統治が難しくなってきたローマは、それまでの共和政では維持が困難ということで実質的な権力者を求めるようになってきます。
しかし、元老院という古参の権威が存在するので中々うまくいきません。そんな中、カエサルが台頭し、そして第二回三頭政治のオクタウィアヌスにより元首政が始められます。そういう激動の時代において反乱を起こしたのがスパルタカスであり、彼の運命は歴史を学んでおけば知っているものの、その展開には釘付けになってしまいます。しかし長い。歴史映画にありがちな傾向ですが、今作もそれに漏れずに198分と相当長い。故に剣闘士たちの脱走やラストの反乱以外は退屈するかもしれませんが、やはり歴史が動いているというのを鑑みると、傑作と言わざるを得ません。
個人的には、スパルタカスと黒人剣闘士が戦う場面が印象的でした。剣闘士同士、いかに絆が芽生えていても見世物にされてしまったらお互いの命を懸けないといけない。本当に強烈な心境であると思われました。

ローマという国の統治システムに関しては世界史上においても最高クラスであり、数多くの国がローマ帝国という国を模範にしたようです。2000年近くたった今でも人々を魅了するローマ帝国。そんなローマ帝国も、帝国になるまでにはかなり苦労した模様。その中で、スパルタクスの反乱は歴史上にも残るローマを苦しめさせた事件であります。どんな国にも不満は募る。完璧な国などないのだということが今作からも窺えます。

ちなみにスパルタカスを演じたカーク・ダグラスは健在のようでして、なんと齢100歳!これには仰天しました。カーク自身は、生きることには前向きなものの、同僚がみんな先に逝ってしまったため悲しんでもいるようです。人生とは儚いものですね。
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