タマル

スパルタカスのタマルのレビュー・感想・評価

スパルタカス(1960年製作の映画)
2.5
戦記ものかと思ったらラブコメかよ!
クソッふざけんや!!

如何に英雄の果敢な戦闘が描かれるのかと思いきや、くだらん奴隷女とイチャイチャイチャイチャイチャイチャしてダラダラと時間が過ぎる。いや、そりゃかの有名な『十戒』とかも女とイチャイチャする場面は多いけど、それはシナイ山で神の訓示を受けた後の聖人モードとの対比の為であって、ブッタが悟りを開いた後、赤ん坊を指差して妻のヤソーダラーに「その子にはラーフラ(悪魔)とでも名付けておけ!」と言い放つみたいな効果だからね。初めから終わりまでイチャイチャしてたんじゃスケールダウンするだけです。
こういう歴史ものってなぜ180分超もあるかといえば、壮大な時間の流れの変化や世界の巨大さを描く必要に応じているわけじゃん。そうなると、『スパルタカス』の第三次奴隷戦争ってたった2年だし、ローマ付近をうろうろしてるだけだからたいして大きい世界観も感じないんだ。とすれば、必然奴隷社会と貴族・騎士社会との対比に向かうべきだけど、本作はそこまで踏みこまない。ひたすら、スパルタカスという個人と数人の貴族の話になっている。要は奴隷達の生活とかの詳しい描写がなく、なんとなく「大衆」みたいな描き方だから、スパルタカスも貴族よりに見えるんだよね。実際、スパルタカスとクラッサスは女性の交換を通じて完全に同じ地平で語られてる。うーん、じゃあ自由の獲得ってか個人の尊厳の話なんじゃないの? だったら歴史戦記ものでやる必然性が……
あと、アクション描写がヌルすぎるし、あんまりちゃんと見せてくれないのがなぁ。トラバとのタイマンはさすがに熱くなったけど、集団戦闘はやっぱ規模の割に見所が少なかったです。

ただ、時代背景も少なからずあるのでしょう。1960年はまだハリウッドメソッドが確固としたものとしてある時代だから、戦闘で血が吹き出すわけにはいかないし、アホみたいな恋愛要素も入れなきゃいけなかったんだと思います。なんで、キューブリックはOVERTURE(序曲)、INTERMISSION(途中休憩)、THE END という、スーツ姿で観に行くべきものだった頃の「映画」をきっちり作る実力があったし、キューブリックの斬新さはこの型から外れる形で常に創出されていたことを確認するために観るのがオススメです。
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