訳ありの男女が出会い、過去を克服していく。男は心を閉ざしているのか、うなぎ相手にしか本音を語れない。うなぎは囚われの象徴であろうか。心を開くことのできる相手が確信できたとき、うなぎは川へと放流される。田舎町の優しい人々とちょっと風変わりな人たちが織りなすほんわかした感じは「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」と相通じるものを感じた。本作は「my life as an eel」なのかもしれない。
役所広司という役者は、何を考えているのかわからない人間を演じるのが実に上手である。
シリアスとコミカル、スラップスティックとリアリズムのバランスもよい。
市原悦子と常田富士男が絡みはないものの共に出演しているのも個人的にはポイントが高い。
余談ではあるが、1987年のカンヌ映画祭で共にパルムドールを受賞した作品は「桜桃の味」であった。共にアプローチは異なるものの、生への希望がテーマであったのは偶然ではないだろう。