うなぎの作品情報・感想・評価

「うなぎ」に投稿された感想・評価

AM

AMの感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

単純に、彼、山下は強い人間だと思った。冒頭、早々事件が起こるが、後の迅速な出頭。冷静沈着な態度。ムショでの資格会得後の人生の再出発。後の出会いを、ただただ大事にできるだけの余裕と広い心。相手を敬うことはないかもしれない、だが相手を気遣う優しさがあり、それを認める人間が周りにあって、彼の過去の愚行の暴露にも、咀嚼して飲み込む。それは彼のソフトな部分に皆が惚れているからだ。観ていて、私も惚れた。
そんな彼に惚れた女ケイコがSEX以外なんの取り柄もない女と侮辱されようもんなら、隣の舟大工が割って出る。殴るや殴る。「皆さんよく見とけ、暴力ってのはこの俺だあ!」かっこよかった。
暴力を極力避けた山下が髭剃りでケイコの敵を切りつける。
「なぜ奥さんを殺したの?よほどのことがあったのでしょう!?」と過去にあった会話。
ケイコが男を切りつけようとした髭剃りを奪って切りつけたんだ。仮釈放が棄却とか、そんな事は御構い無し。なぜかと言うと、単純に身内の人間を、命を張って守ろうとしたのだ。また、自分と同じような暴力で人を殺めるもしくは傷つけるという愚行を、自らが阻止しようとしたのだ、と…解釈しました。
あと柄本明。怪演。
「お前だってな、少しゃあ人間的なんだ!!」と、見てる側は彼に励ましの言葉とも取れる言葉を投げかけた。物凄い悪党役だったからなんだか唖然とした。馬鹿正直。すごい良いシーンだった。なんか、生きる希望とか勇気をもらえる映画だと、素直に思いました。
あとフラメンコシーンでFコードが上手く抑えられない哀川翔のへなちょこギターが中々見ものです♪
ドロドロした話だし、ハッピーエンドではないのかもしれないが一抹の奇妙さと、清々しい余韻の残る映画。かなり好み。

『万引き家族』から『寝ても覚めても』の流れでカンヌっていいなと思って調べたら出てきた映画。邦画でパルムドール受賞はこれ合わせて歴代5本あるらしい。意外と多い。

妻の不倫現場を目撃し逆上。妻を刺殺してしまった山下(役所広司)は仮出所すると千葉の漁師町で理髪店をやりながら人と関わらないように生きていくー。

何も話さないうなぎに自己投影しているのだろうか。自分と外の世界をシャットアウトして、自分自身とだけ向き合うような生活。
なんでも「前向きに、積極的に、負けないで」と煽り立てる現代社会において、立ち止まって自分の中に籠もることを肯定してくれる映画だと思う。そして、いつかはちょっとしたきっかけでまた人と関わっていくことができることを示唆する救いもある。

自転車二人乗りの映画にはずれなし、の法則に当てはまりました。

(あと、千葉の漁師町の雰囲気大好き)
[人生の再生の可能性]

 柄本明の高崎保のからみが何となく余計に思えたり、役所広司の山下拓郎が夢でのうなされも手紙のエピソードも何か稚拙だったりと、ゴタゴタはしている印象だが、なかなか良かった。

 山下が“物言わぬうなぎ”に話し掛けて交流していたから、自分が崩壊せずにいられたのが最も筋が通っていたと思う。

 役所広司と清水美沙の服部桂子の間も一筋縄で行かないし、桂子の過去も現在もいろいろあり過ぎるし、市原悦子の母のエピソードも食傷気味ではあった。しかし、基本的には、人生でいろいろあっても、再生の可能性がある、傷つきは回復できると、とうたうのに希望を感じられた。

 今村昌平らしい、おおらかさとセックスの良さと人生への賛歌だろう。(2018.11.10)
もた

もたの感想・評価

3.8
今村昌平のヒューマンドラマ。ギラギラしていたりドライな感じは影を潜めた印象で、良くも悪くも普通な作品。これぞ役所広司というキャラクターだった。
東京国際映画祭にて
嫉妬から生まれる殺意、好きだから、愛しているから嫉妬する。すごーく分かる。自分も殺しまではいかないけど八つ当たりしたくなる。人間ってほんと単純なもの。すぐ情に流されて思い込んで行動に現れる。人間ってこういうものなんです、見てて可愛いでしょ と客観視がいのある登場人物たっぷりにしたキャスティングと役柄、今村昌平監督の思いがたっぷり詰まってた。若かりし役所広司、哀川翔、田口トモロヲ、柄本明などくせ者揃いで目が離せない。皆赤の他人だけど家族みたい。万引き家族同様パルムドール受賞っていうのはやっぱりこういう人間模様をいかに上手に汚くも愛おしく魅せるかなんだと感じた。

そして映画上映前の舞台挨拶、役所広司って日本を代表する素晴らしい役者だと改めて感じた。目の前で見られて感激。
mami

mamiの感想・評価

4.3
観た理由は、パルムドール作品であることと、役所広司さんを見たかったから。

役所さんのスケジュールの都合で、上映前のQ&Aになった。ネタバレしない程度の話だったが、とにかく、大御所の名役者の腰の低さにびっくり、人間的な魅力あふれる姿に、日本映画界の宝物だと改めて感じた。

今村監督は、人間の愚かさが大好きで、製作発表会会場で、突然、「タイトルは、『うなぎ』が好きなんだ。『うなぎ』じゃダメかなぁ?」とPD(映画「銃」のPD)に言い、原題から『うなぎ』に急遽変えたたそうだ。

映画を観て、『うなぎ』しか考えられないと思った。罪を犯した男の再生の物語、個人的に大八監督の「羊の木」と比較してしまった。

人間の愚かさに『性』『情』は付き物なんだなと、改めて感じた。真っ直ぐな男と、真っ直ぐになりたかった男の対比が、素晴らしい。人間の両面を二人の名優で描く緊張感が素晴らしい。愚かさを、優しさと可笑しさで包み、悪人がいない。人を殺めた過去に対し、周りの人間が優し過ぎるのは、時代的な物かなとも感じたが、後味が良くて、希望がある。
役者は皆素晴らしい。柄本明も、日本の宝物だよね。
UFOエピソードには、美しい星ファンとして、すごく反応してしまった。
女の問に対して、明確に「Yes」と、最後まで言わないのが、男の性なのか?と、笑った。素晴らしい作品です。
てふ

てふの感想・評価

4.5
今村昌平監督、二度目のパルム・ドール受賞作品。不倫中の妻を殺害した主人公が、出所後に始めた床屋での人付き合いを通して、再び自らの人生を見つけていく。監督のかつてのギラツキは無いが、床屋に集う人々の人間模様は素敵なものに感じた。性への向き合い方をうなぎの生殖に例えて寛容に受け入れる最後の決断も面白いなと思ったり。


181027 東京国際映画祭
Japan Now部門 役所広司特集
東京国際映画祭5作品目
fuo

fuoの感想・評価

3.6
シリアスな場面に笑いを取り入れている部分があり、今村監督らしさを強く感じました。
彼の独特なユーモアを感じ取れる映画です。

仮釈放中に、殺した妻に似た女性が現れ…という内容ですが、人間味溢れる作品で、人との距離感が上手く描かれているように感じました。80,90年代の世情も伝わります。

また、刑務所時代の仲間役の柄本明や精神を病んだ役の市原悦子が迫力のある演技をするので印象的です。
小林健もなかなかチャーミングな役どころでした。
masa

masaの感想・評価

4.2
TIFF2018役所広司特集で本人のトークショー付きで鑑賞。

映画というものは、何故だか理由はないが自分が最初から観たくないと思い、ずっと無視してきた作品というものがある。この作品が、まさにそうだ。
20何年前にパルムドールをとった作品とか言われても全く興味がわかなかった。何故かは分からない。
今村昌平監督作品もあまり観たことはなかった。

しかし、今回役所広司特集ということで、スクリーンで鑑賞。
…心に響いた。
今まで観なかったのを猛烈に後悔しました…笑

かつて、妻の浮気に逆上し妻を滅多刺しにして殺してしまった男・山下拓郎(役所)。
以来、極度の人間不信に陥った山下は仮出所後、理髪店を営みながらも人々との交流を避け、飼っているうなぎと話して日々を過ごしていた。
そんなある日、山下は河原で自殺未遂の女性・桂子(清水美紗)を助ける。
桂子は恩返しにと理髪店の手伝いを申し出て、山下は渋々雇うことにしたが……

哀川翔とかが若手役で出ているのでそれを見つけるのもまた楽しい。

役所広司に柄本明が絡むシーンが何度かあるが、二人の役者魂が凄い。本気で喧嘩してる……

ダメな人たちの人間模様を描き出す。しかしどんなダメダメでも希望もあることをしっかりと明示してくれる。
最高の作品だ。
>|