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薔薇の葬列のsonozyのレビュー・感想・評価

薔薇の葬列(1969年製作の映画)
4.0
実験映像作家・松本俊夫監督の劇場用長編第1作。
当時16歳のピーター(現・池畑慎之介)衝撃のデビュー作!というカルトな作品。

ゲイバー「ジュネ」でNo.1のエディ(ピーター)は、オーナーの権田とデキている。
権田は店のママのレダと暮らしているが、疎ましいレダはいつか辞めさせエディをママにするつもりだ。

権田とエディがホテルから出てきたのを目撃したレダは嫉妬の炎を燃やす・・

伊映画『アポロンの地獄(1967)』をインスパイア元に、猥雑なエネルギーに満ちた60年代末期の新宿を舞台に描かれる「裏オイディプス物語」。という解説の通り、アングラなカオスワールド。

セックス、マリファナ(聞いたことのないクスリも。ミナハイ、ノルモ、マルソ、ドントン..)、ゴーゴーダンス、実験映像制作の仲間、“ゲバラ”と呼ばれるつけ髭の友人、学生デモ隊、路上でのゲリラパフォーマンス、60sファッション…

モンタージュ、同じシーンの反復、街頭でのゲリラ撮影、ゲイボーイ達へのインタビュー、哲学的な?メッセージ、全裸男が並ぶ後ろ姿(一人だけケツに白い薔薇)、ゲイボーイ3人で男性トイレで立ちション、ビートルズ等のポスター、ここで登場させちゃう?淀川長治さん(笑)…
まさに実験映像的に遊んでます。

「映画に関する定義は拭いさられた。もはや一切の扉は開け放たれている(ジョナス・メカス)」のような言葉の引用も出てきます。
“All definitions of cinema have been erased.
All doors are open now.”(Jonas Mekas)

やはり特筆はピーター。
素のピーター(少年時代として登場)と美しく変身したゲイボーイの差がすごい。
妖艶な瞳と唇。カラみの表情もエロい。

エディのトラウマとなっている父の思い出。
父の顔だけ黒焦げになっている家族3人の写真。
そしてラストの衝撃の展開。

スタンリー・キューブリックが『時計じかけのオレンジ』 のビジュアルの参考にしたらしいですが、納得の世界観。

「個人の精神は相つぐ否定によって自己自身の絶対に達する」という難解な言葉で終わります。
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