イチロヲ

薔薇の葬列のイチロヲのレビュー・感想・評価

薔薇の葬列(1969年製作の映画)
4.5
生き別れた父親を追い求めているゲイの少年(ピーター)が、ゲイバー経営者の男(土屋嘉男)と情交してしまう。ゲイボーイの群像模様を描いている、ATG謹製のヒューマン・ドラマ。

ピーター(当時16歳)を主役に据えたオリジナル・ドラマを展開させながら、ゲイボーイへのインタビュー、ゼロ次元商会の街角パフォーマンス、ドラッグに依存している日本版ヒッピー族、全共闘の運動家などを映像に捉えていく。

ゲイボーイという人生を選んだ人間たちの姿をセミドキュメンタリー調に追跡しており、ヌーヴェルヴァーグを彷彿とさせる前衛的演出が刺激を投じてくる。そして、ゲイボーイは「虚実の狭間」を自由闊達に舞っている人間であることを痛感させられる。

「自分は何者なのか?」という命題を示唆的に取り上げているため、フロイトのエディプス・コンプレックス、バタイユのエロティシズム論、コリン・ウィルソンのアウトサイダー論など、一連の哲学を吸収させることができる。
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