まつこ

マイ・マザーのまつこのレビュー・感想・評価

マイ・マザー(2009年製作の映画)
4.8
〝彼を強く抱き締めてあげたい〟作品を観ながらそんなことを思った。

世の中は自分が考えるほど上手くいかないのかもしれないし、思春期の子供にとって自立する術がなければその世界はもっと狭く絶望的なのかもしれない。でも、彼に言いたい。

「世界はそれでも美しいんだよ」って。

『母への愛は無意識であり、親離れの時初めてその根の深さを知る』という一節と彼の独白から始まる本作は思春期の危うさに溢れていた。

愛されたいと心は叫んでいるのに出てくる言葉は裏腹で、彼の視線はいつも前ではない何処かを見ている。まるで見られていないことを知りたくないかのように。自分の心を悟られたくないかのように。

ピアノの旋律が胸を締め付ける。彼の心情によって抑揚が変わるこの曲は、ピアノレッスンの『楽しみを希う心』や、人生はビギナーズの『Beginner's Theme Suite』のようにドラマティックで繊細。心に沁み渡る。彼の叫びを現したシーンで使われていた曲も秀逸だった。ドラン作品は色彩、映像、楽曲、セリフ、どれをとっても芸術的。

この脚本を17歳でまとめたとは…彼は本当に天才だなぁ。思春期特有の傲慢さが何とも愛おしい。見え隠れする母の不器用な愛がせつない。

ラストの二人が微笑ましく最後まで魅せてくれました。

世の中には色んな家庭があって、みんながみんな幸せじゃないのもわかっている。
私の想いは偽善かもしれないし、世の中の親になった人がみんな愛を持ってるとは確かに言えないけど、『それでもあなたを愛してくれる人は必ず居る』と愛を信じられない人に伝えたい。
そして両親に〝ありがとう〟と伝えたいな。